カイト・カフェ

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「犯罪に走るなら金を払って風俗に行けばいいじゃないか――とはならない」~教師と性犯罪③

 ストレスによって判断力や羞恥心・道徳心が抜け落ちるとして、
 なぜそのあとのむき出しになった欲望は、性犯罪へと向かうのか。
 犯罪に走るくらいなら風俗に行けばいいのに――、
 そんな一般社会で通じることも、学校では通用しない。

という話。f:id:kite-cafe:20210225072335j:plain(写真:フォトAC)

【むき出しになった欲望は、なぜ性犯罪に向かうのか】 

 私の推察の通りストレスが判断力の低下、羞恥心や道徳心の抜け落ちに繋がるとして、次に問題となるのは、それでは「むき出しになった欲望は、なぜ性犯罪だけに向かうのか」ということになります。

 一皮むいたら顔を出したのが「性」ではなく、「暴力への渇望」や「金銭への執着」で教員には粗暴犯や経済犯も多いということになっても、理屈としてはおかしくありません(もっとも教員は収入が多いというよりは支出の時間がないので金銭欲という意味ではもともと淡白な人が多いのですが)。

 これについて私は、性犯罪ばかりではなく、他の面にも出ているのではないかと疑っています。
 具体的に言えば体罰です。
 もととなる事実が100%生徒側が悪いものであっても、あるいはそもそもがSNSへの投稿を目的とした生徒の激しい挑発によるものであっても、教師が手を出したら人生が終わる、ということは繰り返される研修によって百も承知のはずです。
「人様の子どもの成長のために愛のムチ振るって、自分と自分の家族の生活を投げ捨ててはいけない」
 そんなことは言わなくてもわかっています。それにも関わらず暴力を振るってしまうのは、やはりそこに発達障害的な衝動性があるか、ストレスによる判断力の低下ないしは欠落を考えるしかないように思うのです。

 窃盗についても同じことが言えます。
 私の個人的体験として身近な教師の犯罪といえば、実は性犯罪よりも窃盗の方が多いのですが、それもコンビニでパンと飲み物を万引きしたとか、パチンコ屋で隣の席に置き去りにされたバッグを持ってきてしまったとか、情けないほどにつまらない窃盗ばかりです。思わず「どうせ学校にも地域にも教育委員会にも迷惑をかけるんだから、もっと大きなことをやってくれよ」と言いたくなるほどです。

 ここでクレプトマニア(窃盗症・病的窃盗)との関連性を考えることもできます。クレプトマニアを若年性認知症との関連で説明する立場を採れば、管理職になってからの万引き・置き引きは説明しやすくなります。しかし若い世代の窃盗は説明できませんし、長く引きずってきた窃盗症だとしたらその歳に至るまで逮捕されずに来たことが謎です。
 コンビニやパチンコ屋は防犯カメラのたくさんついている場所です。昔からやっているのならもっと早く逮捕され、管理職などにならずに済んだのかもしれません。しかし今や失うものは膨大です。
 そうなると分かっているのに、小学生でもやらないような犯罪をなぜしてしまうのか。

 しかし今は体罰と窃盗の問題は別にしましょう。逮捕されマスコミに載るような教師の犯罪は、圧倒的に性犯罪が多いのです。情けなくも恥ずかしい話ですが、主題を「むき出しになった欲望は、なぜ性犯罪に向かうのか」ということに限定します。

【「金を払って風俗に行けばいいじゃないか」とはならない】

 「教師はみんなスケベエだ」といった下品な決めつけから始めましょう。その上で「そんなにヤリたかったら金を払って風俗に行けばいいじゃないか」といった言い方にも乗っかっておきます。いずれもネット上にありふれた言葉です。

 しかしこの「風俗に行けばいいじゃないか」、教師にはけっこうハードルが高いのです。なぜならそこにかつての教え子、あるいは保護者がいるかもしれないからです。

 私が30年間の教員生活で直接、学級担任・教科担任として教えた子は4000人ほどです。しかし私の顔と素性を知っているのはそれだけではありません。父母はおよそ2倍、祖父母は4倍もいるのです。さらに言えば担任はしなくても担当した学年の児童生徒はほぼ確実に覚えていますし、部活の生徒もいます。

 私はあるとき、顧問をしていた女子バレーボール部の生徒からこんなことを訊かれたことがあります。
「先生も他の街に行ってエッチな本とか読んだりするわけ?」
 何のことか分からず聞き返すと、
「〇〇中のバレー部の顧問が、うちの近所の本屋でエッチな本を立ち読みしてた」
 こうなるとどこに敵がいるか分かりません。おまけに私は容貌怪異と言っていいほどの面立ちをしているので、行く先々ですぐにばれてしまいます。

 パチンコ好きのある先生は、隣りのおっちゃんにうっかり、
「今日は(玉が)出ませんねえ」
と声をかけたら、
「本当に出ないねえ、先生
と返されて、そそくさと店を出てきたと言います(天網恢恢・・・)。

 そんな調子ですから教員はまず、いかがわしい場所への出入りはしません。
 東京でも八王子あたりの教員が新宿の歌舞伎町で遊ぶのは可能かもしれませんが、私のような田舎だと風俗店の数自体が少ないので、50km離れた街に行っても安心できないのです。

 教員の性犯罪といえば児童買春がやたら目立ちますが、大人相手だと逮捕されないという事情のほかに、もしかしたら大人が怖いといった事情もあるのかもしれません。子どもと違って大人の女性にはいろいろな背後関係や人生経験があるからです。そうした能力をもってすれば、すぐに身元も探られてしまうかもしれません。

 教員の生活は極めて禁欲的で、その意味で言えば現在も“聖職”であることには間違いありません。もっとも遊びに行く時間もありませんから、家で悶々としているというのも違いますが。

【話の筋が違った・・・】

 さて、ここまで書いてきて、私はとんでもない方向に足を取られていたことに気づきます。ボヤいてみたところで教員専用の風俗店ができるわけでもないし、そもそも風俗になんか行く必要もありません。ごく常識的な、普通の意味での性生活が充実していれば、何も外に求めたり犯罪に走ったりすることもないのです。

(この稿、続く)