カイト・カフェ

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「無口な人々に注目する」~日韓問題を斜めから見る3観点② 

 最近変わってきたが
 ニュースを見ていると
 韓国が反日一色に染まっているかのように見えたときがある
 しかし考えてみよう 文政権は誰が見ても急ぎ過ぎなのだ
 だからそこに合わない人も出てくる

というお話。

f:id:kite-cafe:20190829065408j:plain(「韓国の海、シルミドphtoAC より )

 

【李在鎔(イ・ジェヨン)は何を見ているのか】

 今日、韓国では朴槿恵前大統領、友人の崔順実被告、そしてサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長を巡る贈収賄事件の、最高裁判決が出されます。

 今、特にここでは李在鎔副会長についてお話したいのですが、李被告が裁判で問われているのは崔被告を通して行った朴被告への贈賄、横領、財産国外逃避など5つの容疑で、一審では懲役5年、二審では懲役2年6カ月・執行猶予4年(求刑は懲役12年)を言い渡され、明日、最終審を迎えるわけです。判決次第では即日収監となるかもしれません。

 李在鎔副会長と言えば先月、日本が3品目輸出規制を発表した際、文在寅大統領の招きを放り出して日本を訪れ、レジストなどの規制対象をかき集めようとしたハンサム・ボーイですから、羽田での颯爽とした姿を覚えている人も多いと思います。

 サムソン・グループ創始者の直系の孫で、ソウル大学を卒業後、慶応大学修士課程、ハーバード・ビジネススクール博士課程を修了した英才。実質的なサムスンの経営トップです。
 物腰の柔らかい穏やかな人柄で、公正ながらも親切、多少まじめ過ぎるきらいもあるみたいですが、丁寧で近寄り易い人物だと評されています。

 子どものころから帝王学を学び、何不自由なく育ってきた人ですが、この3年間は苦労の連続でした。
 上記の裁判はもちろんですか、副会長が逮捕されたことでサムスンの未来戦略室や所長団会議が廃止され、グループは実質的解体に追い込まれました。今年に入ってからは米中対立による対中輸出の大幅減、文政権の最低賃金引き上げ政策及び企業増税による経費の大幅上昇、あるいは政府の経済無策によるウォン安などで、今年上半期の収益が55%~60%も減ってしまったのです(前年比)。
 それに重ねて今回の日本による3品目輸出制限・輸出優遇除外。
 これも文政権の外交無策によるもの。呼ばれて青瓦台に出ていけば、「世界中にネットワークを持って日本にも支社や出張所があるというのに、今回の日本の処置が予想できなかったのか」と逆に怒られる始末。
 これでは踏んだり蹴ったりです。

 物腰の柔らかい穏やかな人柄だそうですからオクビにも出しませんが、私だったらハラワタが煮えくり返って体内でモツ鍋ができてしまいます。
 サムスンに限らず、他の財閥経営者にしても同じでしょう。文政権下の2年余りは何もいいことがありませんでした。

 絶大な権力を持つ韓国大統領の下では黙っているしかありません。しかし一朝ことが起こった時、彼らはすべての権力と財力をつかって政権に歯向かうのではないかと、私は思っています。

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【将軍は語らない】

 相変わらず金正恩委員長は口が汚く、自分を慕ってくれる文大統領にも容赦なく「バカ」だの「怖気づいた犬」だの「図々しいヤツ」だの、愚弄するに暇がありません。 
 何を委員長は怒っているのか――。

 ひとつには韓国が韓米合同演習をやめないこと、アメリカの最新鋭機F35の導入を始めとする軍備増強に余念のないこと。文政権になってから国防費は朴槿恵時代をはるかに上回っています。
 委員長の、
「片方で和平を唱えながら、他方で着々と軍備を増強するとはどういうことなのだ」
というのは筋の通った話です。

 ほんとうにどうしてこんなふうに右手と左手で違ったことをしているのか。わたしはそこで、文大統領が軍に気を遣っているのではないかと疑うのです。

 もちろん韓国の軍人にとっても文大統領の進める南北融和に文句はありません。朝鮮戦争終結宣言が出され、北緯38度の休戦ラインが普通の国境になって、ゆくゆくはEU諸国のように自由に行き来できる見えない国境となる、それはほんとうにすばらしい夢です。
 しかしそれだけでいいのでしょうか?

 私が韓国の軍人だったらそう簡単に南北融和を喜ぶわけにはいきません。なぜならまだ謝ってもらってないからです。
 朝鮮戦争は北が南を侵略した一方的な戦いです。何の落ち度もない韓国が攻められて、20万人の軍人と133万人の無辜の民間人が殺されたのです。その件について一言の詫びも賠償ももらってない。

 いやいや同じ民族がひとつになるのだから、そんな昔のことには目を瞑ろう。
――それもいいかもしれません。65年以上も前のことは水に流してもいい。

 しかし2010年の天安沈没事件で犠牲になった46名の兵士と延坪島砲撃事件で亡くなった2人については、今も息遣いが聞こえるほど近くに思い出せるのです。それについては真摯に謝ってもらわなくてはいけない。
 それを抜きに南北融和などありえない――私ならそう考えます。同じ軍隊の飯を食って苦楽をともにした友人が、不意打ちを食らって無残に死んだのです。それを忘れて北と手を結ぶなら、それはもう人間ではありません。

 現在の文政権はすべての葛藤に目を瞑り、南北融和を図ろうとしています。文民統制の下で今は軍も何も言いませんが、一朝ことが起こったら、ここにも言わねばならないことがたくさんあるはずです。
 
 

 【政権基盤は、案外もろいのかもしれない】

 遠く海を隔てた日本から、しかもメディアを通して見ているのですから、当然、韓国国内の微妙な空気まで読み取ることはできません。しかし財閥や軍の人々が、文大統領に素直に従っているわけでないことは容易に想像できます。
 政権もその反目に気づいていないわけではない。

 そう考えると、落ちたとはいえ50%近い支持率を誇る文大統領の、政権基盤も案外あやういものなのかもしれません。