「日本が東アジアを主宰する」~令和はこうなる3

 平成は東アジアの安定が一気に崩された時代だった
 世界で最も安定していた地域が 一気に流動的になった
 令和はその流れを引き継ぐだろう
 日本はその東はずれにあって 動かないことで東アジアの安定を主宰するだろう
というお話

f:id:kite-cafe:20190508202619j:plain(ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」:左)

【「いずも」が来た】

 昭和の終わりのころ、生徒にアメリカやイギリスの航空母艦の写真を見せてその働きを簡単に説明したあと、
「ところで日本の自衛隊には空母が何隻あると思う?」
 中学校の社会科教師だったころ、日本の平和憲法について学習する端緒がいつもそれでした。

 自衛隊保有する航空母艦の数はもちろんゼロ。空母というのは外国の領土近くまで侵入して、そこから戦闘機による攻撃を可能とする、その意味では徹底して外征的・攻撃的な艦船です。専守防衛を旨とする自衛隊保有できるはずもありません。それが昭和の常識でした。

 ところが平成の終わり近くになって突然「いずも」という、どこから見ても空母にしか見えない自衛艦が出現して、私は度肝を抜かれるのです。

 もちろんあれだけの大型艦が秘密裏に造られて突然姿を現したというのではなく、きちんと国会で予算を通し通常の手続きを経て建造されたはずですが、その時どきのニュースを、私はいちいち見落としていたのです。
 しかし私のような暇人ニュースマニアが見落とすということは、大した反対運動もなく、国会がもめることもないまますんなりと通過したに違いありません。

 ヘリコプター空母(正式には「ヘリコプター搭載護衛艦《DDH》」)だとしても垂直離着陸機なら簡単に搭載できる大型の自衛艦、そんなものが生まれるなんて――昭和の時代には夢想だにできず、平成の前期だって考えられないことでした。

 今から思うと平成も三分の二が終わり、まだ名前のついていなかった「令和」の足音が聞こえるころになって、空母と見まごう自衛艦の建造を可能とする社会的雰囲気が醸成されていたのでしょう。

 

【平成は東アジアの均衡が崩れた時代だった】

 「いずも」の建造の背景に、東アジアの政治情勢の、大きな変化があるのは間違いありません。

 たとえば1980年代半ば(昭和60年前後)まで、日中関係は日米関係と同じくらい良好だったのです。それが1989年(平成元年)の天安門事件をきっかけに一気に悪化し、小泉首相靖国神社参拝を契機として始まった反日暴動(2005年=平成17年)を経てすっかり“きな臭い”ものになってしまいました。

 韓国とはやはり靖国問題で燻った後、2012年(平成24年)の李明博元大統領による竹島上陸および天皇謝罪要求問題によって関係がぎくしゃくし始めて、それ以来、悪くなる一方です。その後、日本では2次・3次と言われる韓流ブームが起こり、今や日韓合わせて1000万人もの観光交流があるというのにも関わらず。

 北朝鮮についっては2002年(平成14年)の小泉訪朝・金正日総書記拉致謝罪によって日朝新時代の幕開けかと思ったら、むしろ関係悪化の契機となってしまいました。北朝鮮拉致問題で誠実な対応をしていないことが分かったからです。北朝鮮も、一時帰国させたはずの拉致被害者を日本が返さなかった(当然ですが)ことで、すっかりヘソを曲げてしまいます。

 今、改めて振り返ると竹島尖閣も、昭和の間はほとんど問題になりませんでした。メディアも扱わなければ学校でも教えません。学校で学ぶ領土問題といえば北方領土だけで、竹島の「た」の字も、尖閣の「せ」の字もなかったのです。

 私は社会科の教師ですから竹島尖閣も知っていました。ですから当時は北方領土の学習のたびに、
「仲の良い中国・韓国との領土問題には目をつむり、仲の悪いソ連との問題は授業で扱うのかよ」
と自分自身で鼻白んだものでした。そのくらい今とは状況が違っていたのです。

 平成というのは30年かけて東アジアの蜜月を終わらせた時代だったとも言えます。

 

【令和の外交はこうなる】

 外交というのは相手のあることですから「令和の外交はこうなる」と断定的な記述をすることはできません。
 特に世界の大きな旗頭である合衆国の大統領があれですから、明日の情勢ですら分からないのです。しかしそんな状況でも、確実に分かっていることも少なからずあります。

 その一つは「日本の令和年間は中華人民共和国の全盛期とほぼ完全に重なるだろう」ということです。ここ10年~20年が中国のピークで、やがて地獄のような少子高齢化が始まり、衰退の道を辿り始めます。
 もし中国がそうした興隆と衰退の道を出来るだけ穏やかに送ろうとすると、現在の強硬なやり方を変え、ある程度穏便な、普通の国のやり方に変えていくしかありません。あちらで衝突しこちらで戦っているようでは国内政治も覚束ないからです。
 その意味で、中国が一帯一路をどう進展させていくかはひとつの指標として慎重に見ていく必要があるでしょう。

 北朝鮮はこのままジリ貧の道を歩み続けます。
 世界は、韓国が言うように「北朝鮮の政権保障がなされ、平和と経済発展が進めば人権問題も自然に解決するはずだ」などとは考えません。もし核の完全放棄がなされたら、次に欧米の要求するのは人権問題の解消です。
 自由と平等と民主主義、それこそ体制保障と正反対のもので、結局北朝鮮は追い詰められます。

 ロシアは狡猾な貧乏人ですから当てにはできませんし、中国は、一昨年までさんざん顔に泥を塗ってきた相手ですから甘い顔をしてくれているのも今だけ。必要がなくなればさっさと見放すに違いありません。
 トランプのアメリカや安倍の日本が仲間になってくれるはずもなく、文の韓国は頼りにできません。

 何の成果もなかったように見える先日の朝ロ首脳会議も、実は金一族の亡命ルートと持参金の確認だったという話も、案外、的外れなものではないのかも知れません。

 一番予想がつかないのが韓国。南々問題、南々葛藤と呼ばれる国内対立をどう解消できるかによって、この国の未来は変わってきます。文大統領は積弊清算よってすべてを構築し直そうとしていますが、韓国の文化大革命が成功するようにはとても見えません。
 そこで日本は――。

 

【「東アジア」という視点】

 これだけ周辺の動きが激しそうだと日本は頑固に自らのやり方を守るしかありませんし、おそらくそうするでしょう。
 令和は動かないことによって日本が東アジアを主宰する時代になるはずです。

 私が現場の教員だったころ、「東アジア」という括りでものを見ることはほとんどありませんでした。
 しかし今は「東アジア」こそが、地理・歴史・公民のあらゆる分野で最も重要な視点になっているのです。