カイト・カフェ

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「きちんとさせるのが容易じゃない」〜ラジオ体操の話

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【小学校入学式の奇跡】

 小学校の入学式にテレビ局が入って新入生にインタビューすると、十中八九、「算数を頑張りたいです!」とか「国語を頑張ります!」とか答えます。もちろん本気です。彼らは算数や国語が何であるかを知らないのです。

 しかしそれでも入学したてのひと月ぐらいはそのままみんな前向きで、頑張り屋で、先生の言うことは何でも聞こうとします。入学直後の魔法にかかってゴールデン・ウィークくらいまでは醒めないのです。

 ここで親たちはとんでもない勘違いをします。
 昨日までのウチのバカ息子が信じられないくらい頑張っているのですから感動し、こんなふうに考えます。
「子どもたちは先生の言うことなら何でも聞く」
 それだけならいいのですが、さらに続けて、
「だから先生の仕事は楽だ」
などといったお門違いの結論を導く人もいたりします。

 さらにこの人たちは学校で問題が起こると「先生はやることをやっていない」と思いこみます。「子どもたちは先生の言うことならなんでも聞く」のですから、それでも問題が起こるとしたらそれは「言っていない(指導していない)」からに違いない――そう考えるのは非常に単純な三段論法です。

 しかしもちろんそうではありません。お宅のお子様は家庭でそうであるように、学校でもゼンゼン、大人のいうことを聞きません。

 

【ラジオ体操が容易じゃない】

 子どもたちがいかに先生の言うことを聞かないか、聞いてもその通りにしないかは、体育の時間に校庭に出てきた子どもたちの体操を見てみればわかります。

 タイトルに使った写真は列も整って手を高くつきあげ、ほんとうに立派な体操に見えますが(実際これくらいできると「素晴らしい!」と喝采してもいいのですが)、足元をよく見るとホラ、踵の上がっていない子が何人かいますよね。本当はそこまできちんとそろわなくてはいけないのです。揃えることが大切なのではなく、一つひとつの運動をきちんとやれば否応なく揃ってしまうのです。ところがそれが全く難しい。

 本来ラジオ体操は丁寧にやれば冬でも汗の滲んでくるくらいの運動量です。それを子どもたちはきちんとやらない。腕を伸ばさない、回さない、上体もそらさない。
 昭和の時代にピンクレディというスーパースターが登場して「ペッパー警部」を流行らせた一時期を除いて、女の子は絶対に股を広げない、男子の一部は上体回しを上腕回しのようにして扇風機みたいにブンブン回すだけです。

 小学生ならまだ「できない子」が多いから多少甘くもなれますが、中学生だと「やらない子」ばかりなので本当に苛立たしく、しかしこれをきちんとさせるのが容易でないことも分かります。

 私は体育科ではないのできちんとした指導をする場面もなく、小学校の担任時代に自分のクラスの指導をするのがせいぜいでしたが、退職後、振り返って「ああ、こうしておけば」と思うことのひとつは、まさにそのラジオ体操なのです。 というのは、ここにきてこの齢で初めて知ったことがたくさんあるからです。

 

【ラジオ体操を真剣にやってみた】

 教員というのはああ見えて一日中けっこう歩いています。
 私は社会科でしたから休み時間のたびに研究室に戻り、教科書や資料を持ち換えていちいち違うクラスに向かいます(その点で特別教室を持つ理科や美術の先生はあまり歩きません)。
 小学校では高学年の担任をすることが多かったのですが、高学年棟というのはたいていが職員室から一番遠く、しかも6年生は最上階ですからいったん教室に行くと職員室に戻るのが大変です。
 私は当時から物忘れが激しく、忘れ物を取りに職員室に戻って何を取りに来たのか分からなくなるということが再三でしたから歩く距離もハンパではありません。
 ひところ万歩計で計測してみると1日に1万3000歩以下ということはなく、行事等で「ああ、今日はちょっと疲れたな」と思と1万6000歩以上歩いていたりしました。

 それが管理職になったとたんにハタと止まる。退職するとさらに動かない。
 足は上がらない腕も上がらない、血圧は上がる血糖値も上がる、息も上がる体重も増える、というわけでようやく運動をする気になったのですが、そこで始めたのが「テレビ体操」です。

 テレビ体操と言っても特別なものではありません。毎日10分、Eテレの枠で「ラジオ体操」の第一と第二、それに「みんなの体操」という筋肉に負荷をかけるゆっくり目の新しい体操、さらにその時々の運動を組み合わせた「オリジナルな体操」の四つのうちふたつを選んで放送しているだけです。

 決まった時間に忘れずやるのは大変ですし食事との兼ね合いもあるので、普段はVTRに撮って夕食前にやっているのですが、そうして目で見ながらやると私の知らなかったことが山ほど出てきます。

 

【新発見とピントレ】

 例えばラジオ体操の一番初めの運動、両手を前から持ち上げて頭の上で開いて下ろすだけのアレですが、私は半世紀以上、指導者が「背伸びの運動〜」と言っているのだと思い込んでいたのです。
 だから精一杯爪先立ってよろけながら頑張っていたのですが、テレビで見ると踵が上がっていない。そう思ってよく聞くと、言っているのは「背伸びの運動」ではなくただの「伸びの運動」です。

 あるいは片手をあげて二の腕を耳につけ、そのまま横に倒す「からだを横にまげる運動」は、反対側の手の指先が、地面につくくらい思いっきり曲げていたのに、テレビのアシスタントは無理をしていません。ちょっと曲げて脇を伸ばしている程度です。

 両手を左右に振ってからだを曲げる運動は、最後に大きく振り上げる前に指先を見て、一瞬寂しいような表情をつくってからやるとか――改めて確認すると新発見の宝庫です。

 放送ではときおり体操の一部を切り取って丁寧に解説する場面があります。こういうところもきちんと見て覚えておけばいい指導ができたはずなのに、と改めて思いました。

 今はビデオに撮ってあとから見る時代です。家に帰ってからの1日10分――現職の先生方はご自身の健康維持もかねて試してみるとよい勉強になると思います。

(参考:「NHK テレビ・ラジオ体操」。下の方に確認のための図解があります)

 ついでですが毎日のテレビ体操以外に、私は二日に一回の割合で「ピントレ」というのをやっています。これはNHKの「ガッテン〜血糖値がみるみる下がる!謎のポーズで体質改善SP」で紹介されたもので血糖値ばかりでなく様々な効能があると説明されています。

 もう二か月になりますが、いまでもしんどくてほんとうに嫌です。ですが嫌な分、効果がありそうなので頑張っています。