「何もそうまでして学校に行くことはない、ということもない」〜台風の翌日に思い出したこと

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  今日もまだ影響は続いていると思いますが、昨日の台風21号、被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。

 また、一昨日は学校を休みにすべきか始業を遅らせるか、昨日は短縮授業で早く帰すか逆に遅くまで残すか、悩んだり指導に苦慮したりと、落ち着かない時間を過ごした先生方、ご苦労様でした。無事、子どもたちを帰すことができたでしょうか。

 

 

【子どもたちの台風】

 私も何度か同じ経験をしましたが、子どもは思わぬことをしでかすものですから気が抜けません。

 ダメと言われても増水した川を見に行ったり傘をキノコにして遊んだり、いつもは水のない側溝が急流となっているのが面白くて、わざわざ長靴の足を入れたり傘で水をかきまわしたり、全く油断ができません。

 

 心配のあまり一斉集団下校にして、十分指導をした上で帰そうとしたら、心配性の教務主任があれもいけませんこれもいけませんとやたら言葉を重ね、勢い余って、

「台風のあとで荒れた川は魚がよく釣れますが、だからといって獲りに行ってはいけません」

と、知らなくてもいい情報を伝えて校長先生に叱られたりといったこともありました。

 

 

【先生は心配されない】

 山の中の学校に勤務していたとき、大きな台風が来たことがありました。麓の学校ではあちこち大きな被害があったのですが私のところは何もなく、市教委を通して県教委にも「被害なし」の報告を上げました。

 しかし翌日、まったく関係のない話で県教委から電話のあった際、県の担当者が、

「先生のところは何もなかったようで良かったですね」

とおっしゃるので、私は内心イラッとしてこう答えたのです。

「ええ、良かったです。私も含めて市街地から通っている先生たちは誰も自宅に帰れませんでしたが・・・」

 

 そうなのです。県から報告を求められたのは「校舎および校地内の施設の被害」「児童生徒の被害」「児童生徒の家庭の被害」の三項目であって、教師がどうだったのかはまるで訊いてもらえなかったのです。

 

 台風の日の午後は短縮授業にして子どもを帰し、全員が無事帰宅したことを確認してから終業を待って私たちも早めに帰ることにしたのですが、30分もしないうちに先生たちが続々もどってきたのです。道が土砂崩れで通行できなくなったといいます。特に雨風の激しい時間帯でした。

 

 道はそれ一本だけではなく、いったんさらに山奥に入って大きく2時間半ほど迂回して市街地に行く道はあるにはあったのですが、それも無事だという保証はありません。無駄足は我慢するにしても、行ったら不通で戻ろうとしたら退路も塞がれるとか、土砂崩れそのものに巻き込まれるとかいったことになったら大変です。

 どうしても帰らなければならない事情のあった先生は勇猛果敢に挑戦しまたが、私を含めて麓から通うほぼ全員がその日は学校に泊まることにしたのです。

 県への報告書類には教員の項目がなく、そうした事情は報告しようがありません。

 

 県教委の担当者も多くは教員です。子どものことをまず心配し学校施設を心配し、そして教師のことは思いつきもしないのです。

 

 私が県の担当者と話をした1時間後、「台風に関して、先生たちの被害及び通勤に問題はなかったか」という緊急の問い合わせが全県の小中高等学校に届きました。県教委も慌てたのでしょうね。

 

 ちなみに学校泊の夜の食事は、いつもは昼間しか営業しない食堂にお願いして作ってもらい、翌朝の弁当まで用意してもらいました。女性の先生は教員住宅に住む同性の先生方のところに分宿させてもらい、私たち男性は体育館に柔道畳を敷いてそこで寝ました。

 

 結果的に2時間半のう回路は生きていました。冒険家の先生は無事帰還し、私たちも通勤路が仮復旧するまでの二日間、その道を通って学校に通うことになったのです。往復5時間の遠距離通勤です。

 

 

【何もそうまでして学校に行くことはない――こともない】

 台風もそうですが、冬、テレビを見ていると猛吹雪の中を雪まみれになって集団登校する東北や北海道の小学生が出てくることがあります

 退職した私はそうした映像を見ると「何もそうまでして学校に行くこともないだろうに」と思い、それが一般的な感じ方だと思うのですが、現役教員のころはまったく考えませんでした。

 さすがに台風の一番激しいときの登下校というのはありませんが、土砂降りであろうと吹雪であろうととんでもない強風であろうと、それを理由に学校が休みになることはないしそれでいいと思っていたのです。

 

「休みを一日ふやしてしまうと、その一日分の授業を回復するのが大変だ」というのが理由のひとつです。そしてたいていはそれ以上の説明はしません。しかし急な休みや短縮授業をしたくない最大の理由は別なところにあります。

 それは「そんなことをしたら親が本当に困ってしまうから」というものです。学校の急な休みに合わせて簡単に仕事を休むというわけにはいかないのです。特に自身が子育て経験をもつ、中年以上の先生が休みに反対します

 

 教師というのはどこまでいっても優しい心根を持つ人たちなのです。