最近のニュースを見て思うこと、いろいろありますが、ひとつひとつ書いていくとどんどん遅れてしまいますので、片っ端書いておきます。
【授業で選挙を取り上げることの難しさ】
せっかくの総選挙です。ぜひとも授業の中で現実に即して扱っていきたいといったころですが、これがなかなか難しい。 もちろん不偏不党であること、公平性を守るという点で難しさがあることも事実ですが、一番の困難は、要するに「選挙はとても難しい」ということです。
まず前提として日本の国会が衆議院と参議院の二院制であるということ、その中で今回は衆議院議員の選挙であること(参議院と違って議員の総とっかえなので「総選挙」ということ)、選挙区選挙と比例代表選挙があること、選挙区選挙は日本の場合「小選挙区制」といって一選挙区から一人しか当選できない仕組みになっていること、今回の選挙で立候補者を立てている主な政党は「自民党」「公明党」「希望の党」「共産党」「日本維新の会」「立憲民主党」などであること――と、普通の中学生だともうこのあたりで息切れです。
アンダーラインを引いた部分のほとんどすべてが新出単語です。その意味を学んでいるだけで、すでに頭はオーバーフロー。
さらに具体的な選挙の話となると、どうしても政策について学ばなければならなくなります。ところが今回の争点だけでも「憲法改正」「安保法制」「原発ゼロ」「消費税率引き上げ」「森・加計問題」「北朝鮮問題」・・・どれひとつをとっても1時間や2時間の授業で消化できる内容ではありません。
これらをきちんと理解しようとすれば、5年たっても10年たってもかないません。 それではどれくらい勉強すれば分かるようになるのかというと――ブルゾンちえみ風に言えばこうなります(これ好きだな)。
35年!!
【選挙が面白くなるには人間の熟成が必要】
衆議院議員選挙の年代別投票率の推移を見ると、一貫して一番高いのは私たち60歳代です。
ただし今の言い方には一部誤解されやすい部分もあって、「私たち」は昔から60歳代だったわけでも一番投票率が高かったわけでもありません。
35年前(昭和57年ごろ)、「私たち」は20歳代で投票率は断トツの最下位です。今はこんなに意識の高い「私たち」も、昔は選挙になんか行かなかったのです。
「私たち」の少し年上の、いわゆる「団塊の世代」は学生運動で暴れまくったまさに「政治の世代」ですが、彼らもまた選挙になんか行かなかったのです。そんなものです。
いつの時代も若者は政治に疎いというのではありません。
政治が扱う内容全体を理解して、選挙が面白くなるにはそれくらいの年月が必要だということです。
(若干の浮き沈みはあっても、すべての世代で投票率が下がり続けているのは、それはそれで大問題ですが)
以下、それぞれ別の件。
【独裁者の論理】
一昨日5時の締め切りで希望の党の小池代表が立候補しないことが確定しました。これで希望の党は首班指名にだれを推すか、明らかにしないまま投票日を迎えることになりそうです。
この件に関して「政権選択選挙で首相候補を上げないのはわかりにくい」といった批判が出ていますが、私には理解できません。問題はそこではないと思うのです。
そこではなく、有権者に白紙委任を求めていることこそ問題だと思うのです。
これまで小池都知事は数々のサプライズによって現在の立場をつくってきました。その経緯を考えると、
「水と油で血が結ばれたということも首班指名という言葉で改めて思い出したところです」 とおっしゃる小池さんは、それこそ「水と油」の共産党とさえ連携しかねません、いわんや自民党をや、です。
「誰が首相候補かなどと細かなことを二の四の言わず、とにかく私の党を選びなさい」
というのは独裁者の論理です。
【中国のことわざに曰く「上に政策あれば下に対策あり」】
ついでに言えば“希望の党の踏み絵”と言われた協定書でも、「金額を示さない党への資金提供」「内容を明示しないままの憲法改正支持」など、入党者にも白紙委任を求め、立候補者は全員署名したようです。
「毎年3000万円の上納金」だとか「天皇主権の憲法改正」といった極端な話は出ないと思っているからでしょう。万が一そういった分かりやい話が出てきたら、そのときは離党すればいいだけです。しかし微妙なレベルだったらどうします? 年200万円の党費だとか、憲法96条(改正要件)の改正とか。
そういうところでは妥協を重ねるのでしょうか?
だいぶ心配です。
もっとも中身が明示されないことを逆手に取る立候補者がいることも、私は知っています。
ある希望の党の候補者は、
「もう70年も変えずに来た憲法です、当然改正すべき点はあります。しかし第9条にだけは絶対に手をつけさせません」
なんか小池さんとは方向が違うような気もしますが、それでいいのでしょうか?
【豊田真由子さん】
究極のどぶ板選挙をやっているみたいですが、行く先、行く先、とんでもなく人気があるみたいです。一緒に写真を撮りたがる人、多数。
特に小学生に人気があって(票にならないけど)、豊田議員が行くとギャーギャー集まってくる様子がテレビに映し出されていました。
たしかに子どもも知っている立候補者、テレビにやたら出ていた元国会議員なんてあまりいませんものね。
ただし口さがない子どもたちのこと、誰か一人くらいは「わー、『ハゲーっ』のおばちゃんだ!!!」と大騒ぎしないかと心配しています(マ、たぶん言ってるな)。
【ご声援、ありがとうございます!!】
別にこちらは声援しているわけでもないのに、選挙カーの方をちらっと見ただけで「ご声援ありがとうございます!!」とか言われるの、あれはかないません。したがってスピーカーのがなり立てる車が近づいて来ると、私はさりげなく顔を背けることにしています。
この「ご声援、ありがとうございます!!」を、息子のアキュラは4歳のころ、とても不思議がりました。ほしいものがあるのに「家が貧乏だ」ということ(になっているの)で何も買ってもらえなかった時期です。
「お父さん、ああやって車で大声出して走るとお金がもらえるの?」 (どうも選挙アルバイトのことじゃないみたい)
「ん?どうしてそう思ったの?」
「だって『五千円ありがとうございます』『五千円ありがとうございます』って・・・」
(ナルホド。貧乏《だということに》させてスマン・・・)
(「最近のニュースをみて思うこと」続く)