「勉強は楽しくやるものなのか」〜PISA2015報道のまやかしと失望�C

 PISAやTIMSSの成績が振るわないと「学校は何をしているのだ」ということになりますが、成績が良ければ誉められるかというとそうでもありません。しばしば使われるのは、「日本の子どもは、成績はいいが楽しく学んでいない」とか「成績はいいが、意欲的でない」とかいったケチのつけ方です。

 例えば「科学への関心が低下、OECD平均下回る…PISA2015」(リセマム 2016.12.07)

ではこんな言い方になってます。

 日本の高校生の科学に対する態度は、OECD平均と比べて肯定的な回答をした生徒の割合が依然として低く、「科学の楽しさ」については2006年調査時よりも低下していることが明らかになった。

 これについてはPISAの報告が出るたびに言っていますが、

「基本、成績の良い国や地域の子どもたちは、勉強なんてちっとも楽しいと思っていない、楽しんでやっているようじゃ成績は上がらない」

のです。

 それを証明するのはとても簡単で、Excelを開き、左に参加国・地域を成績順に並べ、右に「勉強は楽しい」と答えた子どもの多い順に並べて線で繋いでみればいいのです。

 全部をやるのは大変なので、成績の上位15か国・地域を赤で、下位15か国・地域を青で結んでできたのが右図です。

 見ればわかる通り、確かに成績世界第2位の日本が「楽しい」では67位というのはほんとうにひどい結果ですが、韓国やフィンランドだって誉められたものではありません。

 逆にコソボだのアルバニアだのインドネシアだの、科学の勉強が楽しくて楽しくしょうがないといった国や地域の子どもたちの成績はこぞって低い――。

 基本的に学業の成績と楽しさは並び立たない二兎なのです。

 成績を追えば「楽しさ」は追えず、「楽しさ」を追求すれば成績は減じる――。

 それはそうでしょう、化学式を一生懸命覚えたり摩擦係数の計算に慣れたりするのはとても大変なのです。逆に学力のことなど考えず、様々な実験をしたり星や植物の観察をしたりしているだけなら、どんなに楽しいかわかりません。

「いやいやいや、そうとも言い切れないだろう。1位のシンガポールは『楽しさ』でも5位だ、ベトナムは8位の成績なのに『楽しさ』では4位と高い得点を挙げているじゃないか。できる国はできるということだろう」

――違います。

 これも毎回言っていることですが、統計の専門家にこの結果を見せれば、すぐにこう言うに違いないのです。

シンガポールベトナムのデータは怪しい」

 母数が大きくなればなるほど、全体の傾向は似てくるはずなのに、そうならなのはやはり変なのです(*)。

「じゃあ、そんなレベルの高い話はしないこととして、カナダやニュージーランドのように『上位の成績、中位の関心』でも構わないから、もっと楽しく勉強させてやってほしい」

――もちろんそれならいいでしょう。

 しかしそのためには“学力が7位でも12位でも構わない。楽しく学ばせてやってくれ”といった政府・マスメディアの後押しがなくてはなりません。

 せっかく生徒の「関心」を高めても、「学力崩壊! PISA2018で2位から12位へ!」などと叩かれてはかなわないからです。

                              (この稿、続く)

*特にシンガポールは毎回こうした数値をはじき出してきます。ただしこれは捏造というより、母集団の取り方がおかしいのかもしれないのです。小学校4年生から進路別クラというお国柄ですから、15歳にもなるとPISAのテストを受けられるグループとそうでないグループに分かれているかもしれません。