「アメリカ大統領選挙の憂鬱」

 多くの人がそうだと思いますが、今回ほどアメリカ大統領選挙に注目したことはありません。

 27日に開かれたテレビ討論会は、リアルタイムで見たわけではありませんがおよそ半日、チャンネエルをバシャバシャ変えながら各局の評価・解説を見たりしていました。

 CNNの直後の調査ではクリントンの勝利と回答した人が62%、トランプと答えた人が27%だそうですが、それがそのまま票に繋がるというものではありません。

 2000年のブッシュ対ゴアではテレビ討論で圧倒的な力を見せたゴアが選挙本番で敗れています。「討論の最中のゴアの冷笑的な態度が票を落とした」と今は説明されますが、どうでしょう? ブッシュの発言は明らかにトンチンカンでレベルが低く、テレビのこちら側でため息をついたり口元をゆがめた人も少なくなかったのです。ゴアの反応は何も特別なものではなかったのです。

 それにもかかわらずブッシュが勝利したのは結局、新大統領が決まったあと、毎朝テレビで見なければならないとしたらどちらが良いか――ひょうきんでヤンチャなブッシュと厳めしく退屈なゴアとどちらがいいのか、というのが判断基準となったからだ、当時はそう説明されました。理解できるところです。

 おそらく識字障害もあってブッシュは言葉をよく間違える、愛読書は「はらぺこ あおむしくん」だなどと言って周囲を呆れさせる、特に略称に弱く、IAEAなどはすぐに忘れて妙なことを言う。ところがそれを逆手にとってパーティーの余興ではそっくりさんと並んでわざと「EIEIO(イー・アイ・イー・アイ・オー)」と間違えて笑いを取る、そういう可愛いヤツなのです。

 もしそうした判断基準が現在も生きているとしたらヒラリーではなくドナルドです。こちらの方が圧倒的に面白そうなのは間違いありません。毎日なにか面白いことを面白い言い方で行ってくれます。

 トム・ソーヤー、アナキン・スカイウォーカーハリー・ポッターアメリカ人が好きなのはたいてい自制心に欠け、無鉄砲で他を省みないガキです。鉄腕アトムドラえもんサザエさんちびまる子ちゃんのわが国とは違います。

 クリントンであろうとトランプであろうと大統領になれば対日政策はあまり変わりないだろうとう評論家もいます(そう言えば反ユダヤ軍国主義・拡張主義を掲げたアドルフ・ヒトラーが政権に就いた時も、専門家たちは“大したことはできない(はず)”と言っていました)。。しかし私はとりあえず、トランプの顔を見るのが嫌なのです。今後4年間アメリカに関わるニュースを見るたびにあの男が出てくるなんてまっぴらなのです。

 他人を小馬鹿にし、嘘とはったりと勢いだけで生きるような生き方は、教育関係者として許せないのです。

 ヒラリー、どうか頑張ってください。アメリカ国民の皆さん、どうせ4年間我慢するなら取らんうよりヒラリーです。

 ところで今回のアメリカ大統領選挙を見て、改めてつくづく思うのは直接選挙というのはどうしようもなくダメなものだということです。ド素人がアメリカ大統領になってしまうかもしれないからです。

 世界の命運が素人に任される、核のボタンが激情家が握られる、イスラム教徒を追い出せメキシコ国境に壁を造れ、日本や韓国が核兵器を持っても構わない、といった荒唐無稽がまかり通るかもしれないのです。

 アメリカ以外に目を移せば、ロシアでは元KGBの親玉が大統領となって人気を博しています。フィリピンでは暴力団の組長みたいな人が本当にボスになってしまいました(ただし私はドゥテルテには少し同情的なところがあります)。

 もっともその点では日本だって偉そうには言えないのであって、かつて東の東京知事が青島幸男、西の大阪府知事横山ノックという時代がありました。東京は以来、石原慎太郎猪瀬直樹舛添要一小池百合子です。知事としての手腕は別として、取りあえずテレビで顔を売って都知事選に出た人たちです。そうでないと選挙に勝てないのかもしれません。

 翻ってヨーロッパは、と見ると、最近安全宣言を出したというので初めて知ったのですが、パリ市長はアンヌ・イダルゴという55歳の美人です。

 今年の6月に選ばれたローマ市ヴィルジニア・ラッジは言わずと知れた38歳の超美人。

 ヒラリー・クリントン小池百合子も美人ですから美人じゃだめだと言うつもりはないのですが、なかなか素直になれないところです。

 その点、間接選挙だとイギリスのメイ首相やドイツのメルケル首相のような“それなりの”人が出てきて少し安心させられます(こちらの方がセクハラか?)。

 そんなふうに書いているうちに、今、日本で直接選挙による国家首脳の選挙が行われたら間違いなく村田蓮舫だろうなと思い当たって、また気が重くなりました。