カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「災害支援自治体ボランティア・コーディネーター」~ボランティアをやりくりするボランティアの必要性

 最初の地震から十日たち、ようやく熊本も落ち着きを取り戻しつつあるようです。
 物資が行き届くようになり、多くの交通も復旧して、ボランティアも活動を始めました。
 今朝も未明に震度4の地震があったそうですが、それでも全体としては沈静化の方向にあり、生存を確保する段階から復興の段階へ移行しつつあります。

 思えば一週間前、行政が音を上げて民間が入りはじめ、隣県が協力体制を整え、さらに国が積極的に関与するようになってからは一切がうまく動き始めた――そういう印象があります。熊本県や、熊本市をはじめとする市町村には申し訳ないのですが、そのレベルで担える災害ではなかったのです。これを教訓として他の都道府県市町村も地震対策を練りなおさなくてはならないでしょう。

 ここ数十年間の大地震は、阪神三陸・熊本と、いずれも大地震の来る可能性が低いと言われていた地域で起きています。単なる偶然かもしれませんが繰り返し危険が叫ばれてきた地域こそ安全で、他の地域はむしろ危険という気さえしてきます(危機意識や下準備の点だけを考えるとその通りなのかもしれません)。
 日本全国どこで大きな地震が起こっても不安なく対応できるよう、全員で考えていく必要があります。実際に当事者になって初めて気づくことも多いからです。

 例えば、今朝のニュースで「罹災証明書」発行の行われていない自治体が三つもあるという話をしていましたが、マイクを向けられた益城町長は「罹災証明となれば調査もしなければならないし、まず全体の調査をするのか、それとも申請があってから調査をするのか、まずそこから考えていきたい」とかいった悠長な話をしていたりします。

 基本的には人手が足りないのです。市役所や町村役場はすでに日常で人員を絞れるだけ絞っています。大規模災害があったからといって日常業務をすべて免除されるわけもなく、水道課も建設課も教育委員会もいつもより忙しい仕事をさせられているくらいです。そのうえ災害対策をしているのですから、もういっぱいいっぱいなのです。
 避難所に指定された学校では教職員が交代で24時間体制で対応しており、とてもではないが学校再開というわけにはいかないと言ったりしています。
 ボランティアは大量に入るようになってきましたが、町役場に行って罹災証明書を担当したり、学校に向かって避難所運営の中核になってくれるような人が足りないのです。
 言い方を変えると、つい数日前まで支援物資のニーズとサプライがマッチングしていなかったのが、現在はボランティアでニーズとサプライが一致していません。

 もう20年以上前、学校ボランティアが話題となり始めた時期、私は先進的な取り組みをしていた新潟県小千谷市に視察に行ったことがあります。そのときとても感心したのは学校ボランティアを組織するに際して、小千谷の場合、まずボランティア・コーディネーターをやってくれるボランティアを募ったのです。組織そのものをボランティアにつくってもらい、さらにその上で運営までしてもらおうというのです。
 これは優れた知見です。どんなに素晴らしい組織ができたとしても、そしてどんなに優れたボランティア名簿が完成したところで、学校が運営の中心を担っていると絶対に長続きしないのです。先生も管理職も忙しいですから、名簿から人を拾って連絡をつけ、打ち合わの日程を詰めて話し合いをする、そんな面倒なことは続けられないのです。小千谷の場合、ボランティア・コーディネーターに電話を一本かけ、例えば「戦争中の町のようすについて話してくれる人を探して下さい」の一言で済みます。いなければ「いない」という返事があり、いれば「打ち合わせはいつが都合いいですか?」といった問い合わせが来るだけです。

 先の被災地の問題に戻せば、益城町長が「罹災証明書を出さなければいけないみたいなんだけどどうすればいい?」と問い合わせると「じゃあ専門家を手配して送ります」とか言ってくれる人がいればいいのです。
「学校を再開したいんだけど、先生たちが避難所運営に忙しくて学校が始められないんだよ」といえば、「わかりました。避難所運営の方に専門家を派遣しましょう」、そう答えてくれる人がいればいいのです。
 誰ができるのか。

 基本的には経験者が一番だと思います。東日本大震災で苦労していただいた各自治体から経験者に来てもらうのが一番いい。特に東日本の場合、被災地が広範に広がっていますから各自治体から一人ずつピックアップしても相当な人数になります。
 おそらくすでにたくさんの市町村職員が熊本に派遣されていると思いますが、救援物資と同じで、必要なところに必要な人材が配置されているとは限りません。それを何とかする。東日本の自治体が連絡を取り合って、いつでも新鮮な自治体ボランティア派遣し続ける、そうすればいいだけです。

 そして現在の事態を克服したら、今度は熊本が災害対応ボランティア・コーディネーターとなるのです。