「グローバル社会の行方」

 先日の「クローズアップ現代」で「租税回避」という話をやっていました。グローバル企業が払うべき法人税を払っていないという話です。

 例えばイギリスのスターバックスはオランダにある本社に多額のフランチャイズ料を支払い、スイスの関連会社にコーヒー豆の代金として破格の送金をします。その結果、イギリスのスターバックスは赤字企業となり、税金を払えなくなります。

 一方オランダやスイスでは正当な法人税を払いますが、この両国は法人税が破格に安い、いわゆる“タックス・ヘイブン”なのです。したがってスターバックス全体では“節税”となり、イギリスから見れば“租税回避”となります。

 しかし(イギリスの)スターバックスは税金は払わないものの道路・鉄道といったインフラは利用しますし、行政サービスも受けます。そこが問題とされる点です(ちなみに日本のスターバックスは別会社で、毎年日本政府に100億円あまりの税金を払っているそうです)。

 これは違法ではないそうです。しかし遵法というにはあまりにも身勝手で他を顧みないやり方といえます。

 かつてホリエモン村上世彰がシャバで鼻息を荒くしていた時代、「会社はだれのものか」という議論が起こされました。社員のものか株主のものか、という意味です。

 当時の新鋭の企業家たちの考えからすれば、会社は株主のものであり、株主に1円でも多くの配当金を渡すのが企業トップの責務ということになります。すると会社の進む方向は非常にはっきりしてきます。

 原材料費や賃金、税金が限りなく安い場所で生産し、できるだけ高く売れるところで売るのです。もちろんその三つ(原材料費・賃金・税金)がすべてそろう国や地域はそうはありませんから、必要に応じて分け、あるいはつなげます。本社をケイマン諸島(最上級のタックス・ヘイブン)に置き、労働力の安いインドやミャンマーに工場を置く、原材料は世界各地から調達し製品は中国や日本やアメリカ合衆国で売る。ただしインド・ミャンマーには十分なインフラがありませんから日本政府を動かし、大量の円借款でそれらのインフラ整備を行う、それが理想的な企業のあるべき姿です。

 ただしそこには日本の姿はありません。

 国に一銭の税金も支払わず雇用も生み出さず、しかし世界企業としてどんどん規模を拡大するグローバル企業―しかし資本主義の論理からすれば、それがもっとも洗練された企業の姿なのです。

「これからの教育は『国際的に活躍できる人材育成』を目指して行われるべきだ」という話がありますが、高い税金を使って育てたこのような人材が、日本国のために働いてくれる保証はどこにもありません。その子はもしかしたら国家ではなく企業に忠誠を誓う人間になるのかもしれないからです。

 これではいったい何のための教育なのか・・・。

 教育を行う者として、心の隅の留めておきたいことです。