カイト・カフェ

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「戻ってきました」成田離婚とIS(イスラミックステート)〜イタリア奇行①

 帰ってきました。
 3月3日の記事をもう一度読み直し、まあ、そんなに大それたことを書いているわけではないな、と確認してからもう一度キーボードに向かっています。「とにかく動いてみよう」といってもさほどのことをしたわけではなく、イタリア旅行に行ってきたというだけのことです。
 イタリアがあこがれの国だったとか、いつか行ってみようとずっと思っていたというわけではなく、ひょんなことから話が持ち上がって、「じゃあ、行ってくるか」という感じになって、それで「とにかく動いてみよう」ということになったのです。そしてそのいい加減さが、あとで災いになったり幸いになったりしました。 
 ことの始まりは息子のアキュラ(もちろん仮名、21歳学生)です。私によく似た根性なしの怠け男で、人生の半分は睡眠で費やし、残り半分は好きなことをして過ごそうといった図々しいところがあります。学生として少しは私よりマシで、授業にはよく出ているみたいです。
 息子に限らず、二十歳前後の若者を見ていると、総じて男の子は臆病でだらしなく女の子は活発で精力的といった印象を持ちます。今回の旅行でも日本人の女性グループはあちこちで見かけますが男性グループとなるとかなり少なく、だからむしろ目立つという感じがありました。
 そんな調子ですから若い二人が結婚し、さて新婚旅行にヨーロッパ10日間といった日程を組むと、新婦は海外旅行十数回のベテラン、新郎は初出国といったことになりかねず、それが成田離婚の大きな原因だと言われたりしています。初の海外では新郎がダメ男に見えてもムリはありません。

 我が家も同じで、娘のシーナ(こちらももちろん仮名、今は25歳)は精力的な活動家で、婿殿は真面目で誠実なおとなしい性格。学生時代に海外旅行の経験がなく、タイだのフランスだのフィンランドだのと走り回っていた娘とは少しタイプが異なります。そこで気を遣って新婚旅行は東南アジアのリゾート地にしました(リゾートだったら判断はオレンジジュースかアップルジュースかといった日常的なものだけで済みます)。
 ただ新婦のだれもがそんなふうに気を遣ってくれるとは限りません。就職してからだと個人的な海外旅行は難しい場合も少なくありません。そこでアキュラに「学生のうちに行ってきなさい」「うん、行ってくるわ」ということになって軽い気持ちで決めたのです。

 私としては初の海外旅行ですのでパックツアーの枠にでも入れて、お爺ちゃんお婆ちゃんたちと一緒に回らせればいいやと思っていたのですが、娘のシーナが「そんなの絶対に面白くない、私が計画を立てるからフリータイムで頑張れ!」ということになり、少々不安だったのですがヨーロッパならそうそう殺されることもあるまいと思ってそのまま行かせるつもりだったのです、一月の末までは。
 そこに例のIS(NHK風に言えば「過激派組織IS=イスラミックステート」)の事件です。
 ネット映像で黒服の男が「日本人はどこにいても虐殺される」というのを聞いて、まず妻が引いた感じになり、シーナも不安になった様子。当然私も「イケイケ」状態からはかなり気持ちがダウンします。そして妻が「お父さん、ついて行ってやったら」と言いだし、娘が「やっぱそれがいいよ」ということになり、アキュラは不安そうな顔をしたりしています。

 今から思うとそこまで怯える必要はなかったのですが、2月初頭の雰囲気は今とはまた違っていたのです。そこでいい年をした父子の珍道中ということになったのです。私とてそれほど海外旅行の経験はなく、ヨーロッパは初めてなので不安がないわけでもありません。

(この稿、続く)