「総選挙でもうひとつ」

 選挙運動期間中でしたので、ここ2週間のワイドショー、ニュース番組は奇妙な緊張感がありました。候補者や政党を直接あつかうのは公職選挙法がらみで面倒なので、その周辺をウロウロして具体性のない話ばかりしていたからです。その中のひとつが、「若者の政治離れ」です。

 私自身も先日(12月2日)、2012年の総選挙を例に挙げて「60歳代の75%近くが投票に行くのに20代は38%しか行かなかった、若者よ、選挙に行け!」といったお話をしましたが、それは年寄りの好き勝手にさせるなという意味でした(私も年寄りになりましたから安心して言えます)。その時も“若者の政治離れ”といった文脈では話しませんでしたし、政治離れが進んでいるなど考えてもみないことです。

 若者の政治離れなど進んでいるはずがありません。かなり昔から選挙に行かなかったのです。

 上のグラフは昭和42年(1967年)以来の総選挙の投票率の変遷を年代別に表したものです。見てすぐわかるのは20歳代(赤線)の有権者は、ほぼ一貫してすべての年代層の一番下を推移しているということです。

 グラフの起点である昭和42年のみ70歳以上が下にいますが、そこだけが例外で、以後、投票率は60歳代が最高、続いて50歳代、40歳代、30歳代、20歳代。その間に70歳代が迷走するかのように絡む、そんな感じ今日まできています。

*70歳代の投票率が他の年代と一様でないのは天候の関係でもあるのでしょうか。また昭和42年から10年間ほど、高齢者の投票率が一貫して伸びているのは、老人でも投票しやすい何らかの方策が打たれたのかもしれません。興味あるところです。

 要するに、昔から若者は選挙に行かなかったし、その若者が40年ほどして高齢者になるとすべての年代で最も選挙に行く立派な有権者になるという、ただそれだけのことです。ことさら悪く言うのは気の毒です。

 今回の総選挙の投票率小選挙区)52・66%は戦後最低だそうです。前回(第46回)も戦後最低で59・32%で、その記録を破ったことになります。ただし前回の数字はびっくりするようなものではなく、第43回は59・86%、第41回が59・65%ですから平成以降、選挙はさっぱり盛り上がらないというだけのことなのです。

 テレビを見ていたら「日本の民主主義はアメリカから与えられたもので、だから国民は選挙権を大切にしない」とか言っている人がいましたが、そんなこともありません。民主主義のために大量の地を流したと言えばまずイギリスですが、そのイギリス議会選挙でも投票率は65・1%です(2010年)。

 アメリカ独立戦争第二次世界大戦も含めたすべての戦争の中で、最も多くのアメリカ人の血が流された戦争でしたが、そうして獲得した自由の国の選挙は大統領選でも50%程度、議会選にあたる中間選挙となると40%を軽く切ってしまいます。

 要するに生きるか死ぬか、社会の不安定を乗り越えられるかできないかといった切羽詰った国でないかぎり、投票率はじわじわと下がってしまうのです。

 評論家の言うことは、必ず確認し直さなくてはなりません。