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「教育のパッチ―ワーク」~良いとこどりだけでは学校は成り立たない

 NHK日曜日の午後6時10分から放送されている「これでわかった!世界のいま」という番組が好きで、録画までして必ず見るようにしています。
 基本的には世界のニュースをわかりやすく解説する子ども向け番組ですが、いわゆる「今さらひとに聞けない話」が満載なので私も楽しく視聴しています。
 大型連休があったり、そのあと熊本地震に関して言いたいことがあったりして後回しになっていたのですが、5月1日の放送分について、少し気になることがあったので記録しておきます。「▽政治に若者の参加を!あの手この手世界各国の選挙事情」というタイトルで、とっかかりは、世界各国、投票率の伸び悩みは深刻で、あの手この手の工夫をしているという話でした。

 手っ取り早い方法として罰金を科す国があったり(ブラジル・オーストラリアなど)あるいは投票証明書がないと一時的に銀行からお金が下せなくなる国(ボリビア)があったりとなかなかたいへんなのですが、そうした強制力を使わなくても投票率の高い国としてスウェーデンオーストリアが紹介されます。両国に共通なのは学校教育における選挙の扱い――それは例えばこんなふうです、

 選挙権が18歳からのスウェーデン。若者の投票率は80%前後とヨーロッパでも最も高い国の1つです。この国では政治の教育が小学校から始まります。自分の考えを主張することなど民主主義は何よりも大切な価値観だと繰り返し学びます。
 こちらは子どもたちが使っている社会科の教科書です。自分の意見を社会に反映させるには投票に行くことのほか集会・デモを行うことが重要だと紹介されています。意見を持つだけでなく政治に参加する手段も学んでいるのです。

 こちらはスウェーデンの国会です。集まっているのは高校生です。毎年、全国からおよそ350人の高校生が選抜され、現役の閣僚と国の課題について議論する機会が与えられています。会議の内容は議事録として政府に提出され実際の政策に反映されることもあるということです。

 実はその前の週の金曜日のニュース・ウォッチ9でも同じ問題が扱われて、そのとき対象になったのはドイツでしたが、そこでも学校教育が決め手でした。とにかく生の政治を恐れず授業に乗せ、子ども同士が話し合い、時間をかけて政治を考えさせるという学校の様子が紹介されていました。
 そして対照されたのは日本の私立高校で、生徒たちはドイツの学校のVTRを見たあと「あんな授業をやってくれたらもっと政治に関心を持てるのに」などと感想を述べていたりしました。

 再び「これでわかった!世界のいま」にもどって、こんどはオーストリア
 こちらはオーストリア。この国では、さらに若い16歳から選挙権があります。
 先月、選挙の候補者が集まるイベントが開かれました。オーストリアでは若者に候補者を知ってもらうための場が設けられ多くの10代が集まるのです。
 
参加したイザベラ・ワルデルさん。16歳です。選挙について学ぼうとやって来ました。
 オーストリアが選挙権の年齢を16歳に引き下げたのは9年前。国単位で16歳まで引き下げたのはヨーロッパでは初めてです。
 今回初めて投票することになったイザベラさん。自宅でもインターネットなどを使って候補者についての情報を集めています。投票できる年齢になるまでに政治に興味を持つようさまざまな取り組みが進められています。
 その1つがデモクラシー工房。子どもたちは8歳から民主主義や議会の仕組みを学ぶことができます。この施設の特徴は子どもたちが教室の中だけでなく実体験を通じて学ぶことです。この日は街頭に繰り出し世論調査です。政治に対する大人の考えをインタビューしました。
 さらに政治家にも積極的に質問をぶつけます。オーストリアでは家庭でも選挙や政治は日常的な話題です。日頃から社会に関わることができる環境が政治に主体的に参加する土壌を作っているのです。
 すばらしいですね。感激しちゃいました。

 ところで、こうした報道に対して、次のようなチャチャを入れるのはお門違いでしょうか?
「だから言わないこっちゃない! そんな面倒くせエ勉強やってるからドイツもオーストリアスウェーデンも学力が低いんじゃ!」

 PISA2012によれば「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」の順位は、
 日本が     7位、 4位、 4位であるのに対し、
 ドイツ    16位、19位、13位
 オーストリア 18位、28位、23位
 スウェーデン 38位、36位、38位
です(65カ国中)。

 さて、学力は上海や香港・シンガポールに学び、主権者教育はドイツ・オーストリアスウェーデンの真似をして、道徳教育は教科書も時間もきちんと確保されている中国・韓国に追いつけ追い越せ。
 そう思っても思い出すと小学校の英語学習もお隣の韓国・中国が小さいころからやっているからというのが大きな圧力だったし、これからはコンピュータプログラミングも学び、「対話的・主体的で深い学び」とかのアクティブラーニングも導入し――と。

 こんなパッチワークのような教育――日本の学校の先生たちは優秀だから「やれ」といわれればやってしまいますが、それでどこかにひずみは出ないか、私は不安になります。

 子どもに関する昨日のニュースで、私の気を引いたものはふたつ。
 ひとつ目は東京の台東区で女性が殺されて逮捕された女子高校生長女の件
 逮捕の女子生徒「やってない」=自宅で母親殺害容疑−警視庁
 ふたつ目は品川区で女子中学生2名が鉄道自殺した件です。
 中学生2人死亡、かばんから「死にたい」メモ

 ほんとうにしなければならないことはたくさんあるのに、こうした子どもたちに対する「心の教育」といったものは、もう手が届かなくなるかもしれません。