カイト・カフェ

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「USBが使えない。ではどうするか」〜上に政策あれば下に対策あり

 新しいシステムは、専用USBで暗号化された情報を持ち出すことのできるものでした。もちろん校長の許可は受けなければなりません。ただしそうして持ち出した情報はUSBから個人用コンピュータには移動できないのです。家ではUSB内部だけでデータを書き換え、それをまた学校へ持って行くだけです。良くできたシステムです。これで市当局は情報を囲い込むことができますが、私たちがつくった文書を私たちの手元に置くことはできないという状況は変わりません。これでは困るのです。私たちは同じ文書を次の学校でも使う可能性があるからです。

 中国に、「上に政策あれば下に対策あり」という諺があるそうです。いかにも中国らしい言い方です。そしてそれはしばしば、世界中に当てはまります。

 私がまず考えたのは学校からも家庭からも自由にアクセスできる専用サーバを生み出すことです。ハードに関する知識が全くありませんので、専用コンピュータを構築することはできません。そこで「レンタル・サーバ」をインターネット検索にかけるのですが、当時、この言葉で拾えたのはすべてサイト用のものでした。つまりホームページをつくる際にデータを置くスペースです。

 もちろんコンピュータ・サーバですのでwordやexelの文書も保管できるのですが、これを送ったり引き出したりするためにはFTPという専用ソフトが必要で、それを学校のコンピュータにダウンロードするのはいかにも気が引けました。いやそもそもアプリケーションのダウンロードには市の許可が必要で、不用意に申請すれば余計なことを聞かれるのがオチです。

 現在ですとgoogleドライブのような優れたレンタル・サーバがあってマイ・ドキュメントと同じような感覚で情報を保管できるのですが、それとてアプリケーションのダウンロードが必要な点は同じで学校にはなじみません。そして最後にたどり着いたのが、最も原始的なやり方、メールによる情報の転送です。
(ちなみに、現在の私は事情があって自宅と実家の二重生活をしており、それぞれの場所で作成する文書はすべてgoogleドライブに保管してあります。これだと同期を全く意識せず、ファイルを管理することができます。無料で使える容量は最大15ギガバイトですか個人の使用としてはまったく不自由しません。スマートフォンからもアクセスでき、非常に重宝しています)

 私は最初、自宅のメール・アドレスから学校の個人アドレス(自分用)に添付ファイル付きのメールを送っていました。市のメールアドレスを使うことで、情報漏えいの際は市に半分は責任を負ってもらおうと思ったのです。ところがある時、学校のコンピュータからWebメール(YhoomailやHotmailGmailなど)にアクセスできることを知ったのです。これは驚きでした。他の自治体でwebメールへの接続ができないことを知っていたので試してみることもしていなかったのです。そしてその状況は私にとって至福のものでした。なぜなら自分のWebメールアドレスに送ったメールは、私自身が削除しない限り永遠に残るからです。

 私の個人アドレスからから私自身のwebメールアドレスにファイル付きメールを送る、あるいは学校の専用アドレスから私自身のメールアドレスにファイル付きメールを送る、いずれの場合もweb上に私のファイルが残る、それは私が期せずして専用サーバを手に入れたのと同じなのです。かくして私は、自由にデータを送り、保管することができるようになりました。  

 勤務時間内では仕事が終わらない、教員生活を続ける限りずっと持ちまわすデータがある、そうした状況がなくならない限り、教員はさまざまな方法を探してはなんとか情報を確保しようとし続けます。そのことを前提としないシステムは、教師に多くの困難を強いながら、しかも定着しないはずです。