「カクテルパーティー効果のこと」

 昔、ある性格診断をしたところ、私の第一の特徴は「調べる人」なのだそうです。確かにその通りです。

 若いころは一度調べ始めると答えが見つかるまで諦めがつかず、辞書や書籍の上には付箋の束が広がりました。Aを説明する文章のBという言葉が分からず、Bを調べているうちにその中のCが分からず・・・今はネット検索でたちどころに調べられることが、昔はできなかったのです。

 ほんとうにウンザリとするような状況でしたが、年齢を重ねると「諦めて放置する」という知恵もついてきます。1時間も調べて見つからないことはそう簡単に分かることではないのです。しかしその疑問を大切にしているといつか答えに出会う、すれ違いそうになっても疑問のアンテナは必ずそれを捉えると、分かって来たからです。

 この話はけっこう私の十八番で、その例として「中学校時代から疑問に思っていたこと『中国とは1000年以上もの交際があったのに、マルコポールはなぜジパングなどという奇妙な国名をつかまされたのか』という疑問を大切にしていたら、十数年後、説得力のある答えに出会った」という話をします。マルコポーロが聞いたのは「ジッパン(グ)」、つまり「ジツ(日)」「ポン(本)」だったのです(という説)。

 さて今回出会った「諦めて放置された疑問」の答えは、カクテルパーティー効果に関するものです。カクテルパーティー効果というのは、パーティーのようにたくさんの人が雑談しているなかでも、自分の話し相手の話や興味のある人々の会話は自然と聞き取ることができるというものです。人間の能力のすばらしさを示す例として好んで話すのですが、この効果、テープレコーダやボイスレコーダで記録したものについてはほとんど効かないのです。なぜ生の声だと聞き分けられるのに記録媒体だとだめなのか・・・。

 その答えと昨夜のNHK「ためしてガッテン!」で出会いました。面白い実験をしていたのです。

 頭の左右にスピーカを置き、まず右のスピーカから指示と雑音を出します。指示が聞こえない音量の雑音ですから、当然聞き取れません。ところが反対側のスピーカ同量の雑音だけを出してやると、指示された内容が聞き取れるのです。雑音は2倍になったのに言葉はむしろはっきりする、それが証明したい事実です。その秘密は、言葉が左のみから出てくることで、全体に広がる雑音の中でそれだけが異質と認識できるからです。

 パーティーのさなか、音は右からも左からも、正面からも右前からも左前からも来ます。カクテルパーティー効果は人間の耳が、音の到達する左右の時間差を計算し、どの方角から来たかを聞き分けるところから生まれます。その差が10万分の数秒であっても聞き分けることができるのだそうです。

 そうなるとあとは必要とする情報の方角の音を、脳が増幅させればいいだけです。レコーダの音は一か所から出てきます。だからカクテルパーティー効果は起きないのです。

 聞けばそれだけのことですが、長年疑問として抱えてきた私には、ほんとうに清々しいような話でした。