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「『はじめてのおつかい』の知見とピアジェ」~子どもの認知①

 外に作ってしまった子どもを法的に認知するかという問題ではありません。子ども、特に幼児の認知能力についてです。

 日本テレビの「はじめてのおつかい」という不定期の番組が好きで、忘れない限りは必ず見ています。もう今年で23年目になるそうです。

 最近では昔のビデオを放送した後で“あれから〇〇年”とテロップが出て成長した子どもの姿が出たり、“更に〇〇年”と二度目の“現在”が出たりして、「ああずいぶん変わったなとか」「まったく変わっていないじゃないか」とかさまざまな感想を持つことができます。

 その20年あまり前の「はじめての〜」を見ているうちにあることに気づきました。それは昔の方がスタッフの隠れ方が、手が込んでいるということです。いろいろな職業の人に変装しているのですが、カメラマンが次から次へと交代する、そっぽを向いた感じでカメラだけを向けている、人通りの少ないところでは深追いをしない等々ずいぶん気を使っています。それに比べたら最近のスタッフは驚くほど無防備です。
 誰もいない田んぼのあぜ道を背後から中腰で(カメラの入っている)箱を持ってついて行く、いつも訪ねていくお祖母ちゃんの背後からカメラで狙うなど、20年前には考えられなかったようなことを平気でします。

 しかしこれには経験が生み出したある理由があるのです。

「5歳3か月までは大丈夫。(中略)5歳3か月を越えた子をカメラマンが追うと、『まだ来る! 泥棒だ!!』とか言いながら、鬼ごっこになっちゃう。でも、5歳3か月未満の子だとカメラの存在に気づいてるんだけど、自分が撮られていると思わないようです。普通だったら、『何のカメラ?』って追及するけどそれがない」webザテレビジョンのインタビューより)

 この5歳3か月というのは日本テレビスタッフのオリジナルな発見でしょう。しかしなぜそうなのか、説明は一切ありません。スタッフがどう考えているのかもわかりません。ただしあれだけ無防備なのはこの「5歳3か月」という数字によほど自信があるからなのでしょう。放送を見ていても全くその通りだと思います。

 子どもの認知能力が年齢によって段階的に成長していくこと証明したのはピアジェです。彼は例えば、「物の数量はその形が変わったとしても、同じままである」という理解(数の保存の概念)は6〜7歳にならないと獲得されないと言います。

 ピアジェそれを知ったのはこんな実験からです。
「まず、おはじきを2列に等間隔に並べます。そしてどちらの列も同じ数であることを確認させます。その後、子どもの目の前で一方の列のおはじきの間隔を広げるか、または詰めて並べます。並べ替えた後、もう一度子どもに『2列のおはじきの数は同じかな? それとも違うかな?』と聞きます。そのとき間隔が広い列の方がたくさんある、と答えた子どもは数の保存が成立していないということになる」

 私はちょうど息子が4歳から5歳になるくらいのときにこの部分を勉強していたので、面白がって実験したのですが確かにその通りでした。

 子どもを使った実験の面白さは、できない年齢のときは何度やっても同じ間違いをしてくれることです。一か月前の実験なんて全く覚えていません。

 そしてそんな実験遊びの最中、私はとても素敵な場面に出くわしました。それは「サリー・アン課題」をやっているときのことでした。

(この稿、続く)