曲学阿世

 昨日テレビを見ていたら、放射線についてこんな話をしていました。 放射線にはアルファ線ベータ線ガンマ線中性子線といった種類があり、アルファ線は紙一枚程度で遮ることができ、ベータ線はアルミ板で押さえることができる。ただしガンマ線はそれらを突っ切り、人間の体内に深く入って細胞を傷つけることができる」 ここまではいい。しかし、  「今回発見されたプルトニウムアルファ線しか出さないので一見安全なような気がするが実はそうではない。放射性セシウムなどが発するガンマ線は体内を突き抜けているうちに力が弱まるが、アルファ線の場合は皮膚を突き抜けられない分、皮膚表面を集中的に傷つけるため、細胞へのダメージはむしろ大きいといえる」  これは誰が考えたってアホな話でしょう。強いて言えば、放射性セシウムを一瞬身体に近づけた場合とストロンチウムを皮膚の上に乗せ続けた場合とでは、もしかしたらそうなるかもしれません。しかし同条件であればストロンチウムが問題となるのは内部被曝の場合だけです。また逆に「放射性セシウムは体内を突っ切っている間に弱まる(から大丈夫)」と誤解されても問題でしょう。  私は若い頃、「テレビや書籍といったメディアがウソをつくわけがない」と固く信じていました。それがある日、近衛文麿は『ふみまろ』と読む人が大半であるが、実は『あやまろ』である」という記述と、「文麿は『あやまろ』と読むのが正しいという人がいるが、実は『ふみまろ』が正しい」という記述を同時に見つけてしまい、以来わからなくなりました。  最近のことで言えば、放射線の健康に対する影響というのがまったく分からない。年間100ミリシーベルトまでは大丈夫という人もいれば1ミリシーベルトでも危ないという人もいる。  TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)については、内閣府がGDP2.4〜3.2兆円の増加、農水省は11.6兆円の損失と雇用340万人の喪失(特別な措置がなされない場合)、経産省はTPPに不参加の場合は参加した場合に比べてGDP10.5兆円減と雇用81.2万人の喪失との試算を発表しています。  専門家の生み出す数字なのにまったく一致しないどころか正反対の結果になってしまいます。  私たちの世界について言えば、ほんとうに学力は落ちたのか、それは学校の責任なのか、小学生のうちから英語を学ぶと英会話のできる人材が増えるのか、教師の質は下がったのか、そうしたことはまったく検討されないまま、そういうものとして政策が動かされています。  これまでも「不登校は厳しい受験体制と管理教育が原因」とされ、その双方を解消したのに不登校はなくなりませんでした。「グローバル時代の教育は総合的な学習でなければならない」とか「詰め込み教育ではダメだ、ゆとり中で考える力をつけなければならない」とか言われたことも、今や完全に否定されようとしています。  その時々のメディアに露出の多い“学者”や“専門家”が俗受けしやすい論理を振り回し、票につながりやすい教育政策を政治家がぶち上げるからこうなるのです。  学問の真理を曲げて,権力や時流にへつらうことを曲学阿世(きょくがくあせい)と言います。大衆の前に出る人たちは真実や国の未来のために何かを言うわけではなく、自己の利益のために物を語ります。  こうしたものに紛らわされず、子どもたちだけを見て、私たちは正しい道を歩きたいものです。