たまたま職員室におられた中野先生と榊原先生に「レディ・ガガの顔、分かりますか」と尋ねたら「あんな感じでやっているのがレディ・ガガというだけで、顔はわかりません」とのことでした。それで少し安心しました。見るたびに別人のように見える(というか同じ人には見えない)のも、年齢のせいかもしれないと密かに恐れていたからです。若い先生でも分からないならそれでいいでしょう。
さて話を日本の芸能界に移しますが、私の若い頃は顔さえ可愛ければ誰でも歌手になれるという酷い時代で、天地真理さんだとか(伝説の)浅田美代子さんたちがキラキラと輝きながら音のはずれた歌を歌っていました。しかしそれに比べると時代は本当に変わりました。いまや芸能界も裾野が広くなり、相当に実力がないとデビューすらできないありさまです。
元おニャン子クラブの国生さゆりさんも「『モーニング娘。』が出てきたときにはそのクオリティの高さにびっくりした。それに比べたら私たちは酷かった」とおっしゃっていましたが、AKB48はさらにその上を行くはずです。
それにつれて売り方も進化し、俗に『AKB商法』と呼ばれる「一人に何枚ものCDを買わせる」やりくちも、今や全開です。昔も似たような売り方はありましたが、ここまでえげつないことはありませんでした。総合プロデューサーの秋元康さんも、もっとウブでした。
秋元康の奥さんはおニャン子クラブにいた高井麻巳子という人です。人気絶頂の21歳のとき、32歳の秋元に見初められて結婚します。その結婚の申し込みの日、初めて顔を合わせた高井のお父さんが秋元にこう言うのです。
「子どもは天からの授かりものと言われているが、私は天からの預かりものだと思ってこの子を育ててきました。いつか誰かにお返しする日が来ると。あなただったのですね。あなたをずっとお待ちしていました」
いい話だと思いました。私にも娘がいますから、婚約者が現れたらこの台詞をそのまま使おうと思っています(ただしそれにふさわしい男であることが条件)。
3・11以来、私はこの話を児童生徒にも置き換えて思うようになりました。今までも児童生徒を「お預かり」している気持ちはありましたが、それは保護者からのお預かりものであってもそれ以上のものではありませんでした。しかしあの子たちも何かの使命をもってこの地上にやってきたはずです。その本来の使命を遂げさせてやることが、私に与えられた『本来の使命』かもしれないのです。
この国や世界や、時代に役立つ子どもを育て、行くべきところにお返ししたいのです。