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「ニートには年齢制限がある」~特殊概念としての”ニート”

 ニートというのは「Not in Employment, Education or Training(職業を持たず、教育あるいは職業訓練を受けてもいない者)」の頭文字をとったもので、日本では若年無業者と訳されたりします。

 本場のイギリスでは「だから何をしでかすか分からない連中」というニュアンスが含まれるのに対し、日本の場合は「何もする意欲がわかない人たち」といったニュアンスを持たれがちなため、「Neet」と「ニート」はまったく異なった概念だととらえる人もいます。

 厚生労働省の定義では「非労働力人口のうち、年齢15歳−34歳、卒業者、未婚であって、家事・通学をしていない者、また籍はあるが実際は学校に行っていない人、既婚者でも家事をしていない人」ニートということになります。その総数64万人あまりで、ここ数年はほとんど変化していません。
 しかし「変化なし」というのは極めて由々しき事態なのです。なぜなら、定義を見れば分かるように、ニートには年齢制限があって、状況は変わりなくても35歳になると自動的に統計から外されてしまうからです。

「35歳になって自動的に統計から外されてしまう人」がいるにもかかわらずニート人口が横ばいだということは、つまり抜け出た部分が繰り返し補填されているということです。35歳になったとたんに全員職業につけば別ですが、そうでないとしたら(そしてたぶんそうではありませんが)「ニート」は増えていなくても、無業人口は果てしなく増え続けていると考えるのが常識的でしょう。

 そうして増え続ける無業者をまとめていうのが「引きこもり」で、こちらは「さまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態」( 国立精神・神経センター精神保健研究所社会復帰部「引きこもり」対応ガイドライン)またはその状態にある人、と定義されます。
 統計の取り方によって「意欲を失ってしまった失業者」を含めたり含めなかったりとさまざまですから正確なことはいえませんが、その数は160万人から360万人もいると言われています。
 160万人と考えれば日本の総人口の1・3%、360万人と考えても2・9%にしかなりませんのでさほど問題とは思われませんが、それがウチの息子だったりウチの娘だったりすれば呑気に構えているわけにも行かなくなるでしょう。

 教師としての最低最悪は子どもに死なれることです。子どもの自殺はその中でももっとも恐れなければならないことです。次に恐れなければならないのは「引きこもり」です。なぜならそれは魂の死だからです。引きこもって生き生きと暮らせる人はひとりもいません。この二つに比べたら、非行も不勉強もまったく問題にならないくらいなものです。
 私が不登校の指導に夢中になるのは、それがその「魂の死」の入り口付近にあるからです。