かつて同僚に恐ろしく優れた人がいました。授業も完璧、教室は整然と片付き、その中で子どもたちは実に生き生きと授業をしていました。団結力の強い、どこから見ても非の打ちどころのないようなクラスの日の打ちどころない担任です。ところが、このクラスから二人も三人も不登校の子が出るのです。
「私が何でもきちんとやりすぎるのがいけない、もう少し手を抜いてやらなければいけない、それは分かっているんですよ。でも、性分で手を抜くことがどうしてもできない・・・」
そういって彼は嘆きます。しかし私の気持ちは複雑でした。
私は、そこそこの成績の、だらしないクラスのだらしない担任でした。しかし不登校は出さない担任でもあります。その意味では、逆に彼の話を裏付けるようにも見えます。しかしそれでいいのかという思いもあるのです。
私は、年下の彼を尊敬していましたし憧れてさえいました。その彼が授業や学級の質を落として、それで不登校の子がいっせいに学校に来るとしたら、それがメデタシメデタシの話だろうかということです。
不登校は絶対に出してはいけません。それは最悪場合、一生涯の引きこもりにつながり、魂の死を意味するからです。しかしすべての子どもたちが、最良のクラスで最高の授業を受ける権利があるのもまた当然です。
彼と一緒にいた10年ほど前には気がつかなかったことですが、きちんとして完璧なクラスの雰囲気について行けず、学校に来るのが苦痛な子をそれでも引きとめ、他の子と同じように伸ばしてやる方法はいくらでもあるはずです。きっとあります。
私はともに、それをやっていきたいと思います。