カイト・カフェ

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「脳の科学」~ゴリラはあの巨大な脳で何を考えているのか

 今から50年近く前、ケンブリッジ大学の心理学教室に学んだニコラス・ハンフリーという若い学者が、心理学が人間の心を解き明かさないことに絶望して、アフリカのウガンダに渡り、マウンテン・ゴリラの研究を始めます。ゴリラが相当に高い知能を有していることは数々の実験によって明らかでしたが、あの巨大な脳で何を考えているのか、その秘密は野生のゴリラの生活の中にあると考えたからです。

 ところが、実際に観察して見ると、ゴリラの群れの生活は非常に単純であり、何か複雑なことを行っているようすはまったくない。そしてそのうちに、ニコラスとんでもない仮説にたどり着きます。それは、ゴリラはゴリラの社会生活について考えている、というものです。

「彼らはお互いに 親密に知っており、それぞれの立場を知っている。それにもかかわらず、社会的な優劣、誰が食べ物に最初に近づくか、誰が一番いい場所で寝るかといったことを めぐって小さないさかいが果てしなく見られる。さらに深刻ないさかいでは誰が誰と交尾するか、いつ若い雄がその家族から出て行くべきか、といった問題をめぐって大きな意見の不一致がある。時には命懸けの闘いになることもある。このように(森はゴリラたちに問題はつきつけないかもしれないが)他のゴリラの振る舞いは問題を生じうるし、実際に生じている。

 社会的に生き延びるために必要とされる知能は、物質的な世界に順応するのに必要な知能とは、まったく次元の異なるものである。 ゴリラは社会集団をつくることによって生き残ってきたのである。もしゴリラの脳がもっぱら、そのような悩みにふけるという目的のために進化したのだとしたら、人間もまた社会の外側で生きていくことはできない。人類は同胞に対する深い感受性と理解無しに生き延びる事はできないものであるがゆえに、わたしたちの家族や共同体をうまく働かせているもの、それこそがわたしたちの脳、わたしたちの知能の進化の背後にある原動力なのではないだろうか?」
(『内なる目-意識の進化論−』二コラス・ハンフリー)

 私は、小学校5・6年生の行動の中に、同じようなものを見る思いがする時があります。