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「愛知は、10連休に、燃えているか」~先生たちは大型連休が嫌いなのに

 意外なことに教師たちは春の大型連休を嫌う。
 せっかく作り上げた子どもの習慣が簡単に崩れてしまうからだという。
 ところが愛知県は子どもにも教師にも、10連休を強く勧めている。
 それぞれ自主的にゆっくり休めと――。大丈夫か? 
 という話。(写真:フォトAC)

【GW:学校は10連休を我慢できない】

 大型連休前半が終わり、カレンダー通りの人たちは今日から三日間、仕事に学業にと改めて励み。5月3日からの3連休でまた一息をついてと、そんな感じになるのでしょうか。今年は3・4・5日ががっちり土日にかかっていますからうま味も少なく、人によっては「落ち着いた生活ができるからいいや」という感じ方もあるのかもしれません。

 かつて学校の年間暦をいじれる立場にいたとき、たまたま5月2日と6日を休みにするだけで無理なく10連休が取れるという年があって、登校日数なんてものは夏休みか冬休みを2日減らせばいいだけなので提案したら、先生たちから「とんでもない」と激怒に近い反応があり、結局、3連休があって1日登校し、また3連休があって1日登校、そのあと土日連休で5月9日から通常日課という、保護者もこれでよく怒らなかったなあと思うような日程で授業を入れたことがあります。
 先生たちに言わせると、
「せっかくつくった生活のリズムをチャラにして、10連休でダラけ切った子どもを、新年度の緊張感もないところで1からやり直すなんて、そんな非道が許されていいはずがない」
ということになるのですが、ホトホトどこまで真面目な人たちなのかと感心させられたものでした。
 今年については今日からの三日間を休みにすれば10連休。そのような日程を組んだ学校はあったのでしょうか。あったとして、何%ほどだったのでしょう?

【愛知は燃えているか】

 「三日間を休みにすれば10連休」と書きながら思い出したのですが、そう言えば愛知県の公立学校には昨年の2学期から「ラーケーションの日」というのがあって、週末や長期休業以外にも家族で出かけられるよう、年3日まで平日に休んでも欠席にならない制度があったと思います(*1)。
 当然この大型連休に「ラーケーションの日」を使った児童生徒はいたと思いますが、いったい何%くらいの子どもが制度を利用して学校に来なかったのか、その数も知ってみたい気もします。多いのか少ないのか、まったく想像がつきません。

 さらに驚いたことに、愛知県は教職員にも休みを与えたがっているようで、「ラーケーションの日」について確認している最中に、「【知事会見】職員の「休み方改革」の推進について ~連続休暇の取得促進~」*2)という通達を発見しました。2024年3月11日付で、おそらくニュースになったと思いますが私は見落としました。
 それによると愛知県は、
ワーク・ライフ・バランスの充実と生産性向上による地域経済の活性化を目指し、経済界、労働界、教育界とともに、「愛知県『休み方改革』プロジェクト」に取り組んでいます。
とのことで、
ゴールデンウィーク・盆・年末年始の取組期間中の平日に、「半数」を目安に職員が休暇を取得するよう促進します。
として、期日まで指定されているのです。

 もっとも教員にとって「盆」は夏休みの真っ最中ですから促進されなくても休みますし、年末年始は2学期終業式・3学期始業式に重なるのでむしろ取れない。そうなると取りやすいのは今年の場合、文書に示された今日からの三日間だけということになります。
 実際のところ、知事に促されて、教員の半数も休暇をとって10連休を達成してしまったのでしょうか? 休むことへの愛知県の情熱は、本物なのでしょうか?

【愛知県の教育】

 古い情報なので今は全く違ったものになっているのかもしれませんが、愛知県の教育と聞くとまず思い浮かぶのが愛知教育大学卒業生による学校教育の支配、教師間の細かくて実質的なヒエラルヒー(「お局様」という陰の役職があると聞きました)、県民性も相まっての超保守的な教育行政。だからなかなか動かない。
 もっとも公教育において”保守的”は悪いことではなく、私のように、
「ウチの子や孫については『先進的な教育』も『革新的な教育』も『実験的な教育』もしなくていい。昔ながらの、定評がある、確実な教育でかまわない」
という立場もありますから、それはそれでいいのですが、高校進学率は全国最低クラス(下から3番目が定位置)。進学率が低いのは豊田の自動車産業を始めとしてブルーカラーの需要が高く、しかも尊重されているからだ――そんなふうに聞きました。ただしそれなのに全国学力学習状況調査の成績はよく、昨年の場合、中学生は国語こそ13位でしたが、数学は4位、英語3位となかなかの善戦です。
 保守的、保守的と言われる割には名古屋市長は河村たかし。「ラーケーション」やら「『休み方改革』プロジェクト」などといった実績のない試みにも取り組んでいます。なかなか理解しがたい県。興味深いところです。
 
 それにしても児童生徒と教職員が自主的に大型連休を10連休にしてしまって、それでも回っていく愛知県の教育――こんどじっくりと調べに行ってみたいと思います。