カイト・カフェ

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「体験によって、脳そのものが変えられてしまうということ」~私たちは再び成育暦に関心を持たなくてはいけない

 夏休みにやったことのひとつは、これまで取り貯めたビデオを見ることでした。そのうち7月11日放送のNHK「追跡 A to Z 脳の秘密 未来はどう変わる?」は非常に興味深い内容で,、中でも幼児期の体験が人間の脳そのものを変えてしまうという部分は、ショッキングでした。

 CTによる脳のスキャン映像とその人の体験を重ね合わせるのですが、親の体罰を受け続けた子どもの脳の、思考をつかさどる部分、前頭前野に普通の人より19%も体積の少ない部分が見つかったというのです。

 その他にもまるで自分の受けた虐待と呼応するように、例えば言葉の暴力を受け続けた子どもは聴覚野に12%の不足が発見され(「もう聞きたくない!」)、性的虐待を受けた子どもは視覚野に18%もの萎縮した部分があったというのです(「もうあなたの顔は見たくない!」)。

 かつて私たちは、落ち着きがないなどの問題の原因を、親の養育態度や担任の責任に求めたりしました。その後、ADHD・LDといった便利な概念が出てくるとこの言葉によって説明しようとしたりもしました。しかし脳そのものの構造が違うといった仮説を立てた人はほとんどいなかったと思います。

 もし子どもの問題が脳のいびつな成長によってもたらされるものなら、そしてそれが幼少期の体験に由来するなら、私たちがしなければならないことは今までと多少違ってきます。

 最近は子どもの生育暦を調べるということが、主としてプライバシー保護の立場から少なくなりました。しかし改めてこれにも立ち向かわなくてはならないでしょう。

 そしてもうひとつ、脳自体に問題が及んでいるとしたら、脳の構造を明確に思い浮かべながら、欠けた部分を修復するようなトレーニングを重ねる必要が出てきます。

 これから考えていかなければならない、重要な視点のひとつかと思いました。