カイト・カフェ

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「主役でなくてもよい生き方」~昨日、秋葉原で起こった事件に思う

 ネット上で犯行予告をしても、それが現実に移されることはない。それが行われたのは2000年5月の西鉄バスジャック事件だけだと思っていたのですが、一昨日、不幸な形で秋葉原で再現されてしまいました。

 6月8日は、奇しくも池田小学校児童殺傷事件から7年目の日です(2001年)。

 世間・企業などを舞台とし、実行犯が主役、警察が脇役、マスメディアや一般人を観客として、あたかも演劇の一部であるかのように行われる犯罪を、「劇場型犯罪」と呼ぶそうです。かつての三浦和義事件や神戸連続児童殺傷事件などがそれで、前者では容疑者と警察との攻防が、後者では犯罪そのものが、現在進行形で中継されました。

 ただし、これらはかなり強烈な個性がなければ達成できないことで、三浦も少年Aも、常人では計り知れない特別な人たちです。そうでないと、観衆を引き込めなかったです。

 ところがネット社会は、そうした状況を一変させてしまいました。ごく普通の、あるいは普通ですらないほど目立たないサエない人間を、一瞬にして主役の座に踊り出ることができるのです。主役になるためにはキーボードに向って、犯行予告を書くだけで、舞台が展開します。あっという間に観衆が集まるのです。あとはそれをリアルの世界に移すかどうかだけが問題ですが、ネットの世界で高揚した気分は、容易に壁を乗り越えてしまうのかもしれません。

 だから、ネットマナーやネチケットの学習をしましょうというのも大切なことです。 しかし同時に、社会に容認される範囲内でその人が主役になる生き方、脇役として十分に活躍できる生き方、縁の下の力持ちであるような生き方に喜びを持つ感性、そうしたものを真剣に生み出していかなければ、こうした犯罪は増加こそすれ、減ることはないように思います。