台風が立て続けに日本にやってくる。
休日が絡むので児童生徒に十分に指導しておくとともに、
この際、台風の豆知識も紹介しておいたらどうか。
という話。(「地球イメージ」 フォトACより)
【台風の語源と三つの謎】
台風(9号)が来て、台風(10号)が来ようとしています。
今年は7月までに発生した台風がわずか2個、それがたった1カ月で7個も生まれ、一昨日(9月1日)で10個を数えたわけです。それでも平年はこの時期までに14・3個生まれているそうですから、まだまだ少ない年と言えます。
「台風」という言葉はもともと台湾や中国の福建省で激しい風のことを「大風(タイフーン)」といい、それがいったんヨーロッパ各国で「Typhoon」と音写され、再び中国に戻って「颱風」という漢字が当てられて日本では「台風」と略されたと言われています。他にも「台湾付近の大風なので『台風』」といった説もあるみたいですが、前者で十分でしょう。
台風については子どもでも思いつく、いくつかの質問があります。
1. 台風はなぜ左巻きなのか
2. なぜ右カーブで日本に来るのか。
3. そもそもなぜ北に向かってくるのか
等々。
【台風はなぜ左巻きなのか】
このうちの1番は私の十八番(おはこ)で、このブログでも何回か書いています。その中でもっともまとまりの良い「台風はなぜ左巻きなのだろう?」 - カイト・カフェでは、こんな説明をしました。
- 台風というのは迷走する低気圧です。周囲の空気は風となって一点に向かって流れ込み、上昇気流となって上空へ逃げます。(図1)
- これを地表面の風の動きとして上空から見ると、図2のようになりますが、このままだと渦にはなりません。
- 地球上には「コリオリの力」と呼ばれる見せかけの力があり、北半球では全てのものを右に、南半球では左にずらします。したがって国立博物館やディズニー・シー「フォートレス・エクスプロレーション」にある「フーコーの振り子」は右に動いていますし、「ゴルゴ13」も南半球で仕事をするときは狙撃銃を調整しなおすそうです(本人から聞きましたから間違いありません)。
- どうしてコリオリの力が働くのかは説明が難しいので、分かったつもりで先に進みます。
- 「コリオリの力」を考えると、図2は図3のように書き改められなければなりません。
- そうやってみると、なるほど風が右カーブしながら一点に集まると、左巻きの渦ができるのがわかります。
- いうまでもなく、南半球の低気圧は右巻きです。鳴門の渦は左巻きですが、南半球の渦は右巻きになります。この理屈でいくと、家に帰ってお風呂の栓を抜くと左巻きの渦ができそうな気がしますが、実はなかなかうまく行きません。風呂の形状や排水路の方向によって逆周りになったりしてしまうのです。巨大なボウル状の風呂をつくってその中央に排水口を開ければきっとうまく行くと思います。金持ちになったらやってみましょう。
上の記事では「コリオリの力」についての説明を端折っていますが、これに関しては別の日に、次のように説明しました。
地球上には、北半球ではすべてが右に、南半球ではすべてが左にずれるという見せかけの力があります。これを「コリオリの力」といいます。
たとえばこんな実験を考えてみましょう。
大きな回転盤の中心に1人立ち、円盤のふちにもう1人が立ちます。ちょうど北極点に1人が立ち、赤道付近に一人立たせてそれを北極上空から見るような感じです。
そして円盤を左巻きに回転させ(北極から見た地球の回り方)、その状態のまま、円の中心からふちにいる人に向かって、まっすぐなボールを投げます。すると何が起こるでしょう?
ボールはまっすぐ進むのですが、進んでいる間に回転盤は動いてしまいますから、ボールは大きく右にそれたように見えます。
これがコリオリの力です。(台風、無事通り過ぎました - カイト・カフェ)
話を台風に戻して、
「風が右に曲がりながら一点に集まって上昇する様子を、宇宙から見下ろすと『左巻き』に見える」(図3)
――ここがちょっと難しいのですが、理解するよう努めてください。
子どもに話すときは全身を使って踊るように回転すると分かってもらえます。
「風はこんなふうに、
(両手を広げてしゃがみ、ゆっくり立ちながらその手を体に寄せて)
まっすぐ集まって来て、
(そのまま脇の下からバンザイに変えて行って)
まっすぐ上に上がっていくように思われるけど、
(もう一度両手を広げてしゃがんで)
実は右に曲がりながら、
(両手を右カーブで捻りながら体に寄せて)
上がっていくから、
(右手を左上に、左手を右後ろ上に捻りながら体を左回転させて)
こんなふうな回転になる、
ということは、どちら巻きになるかな?」
――といった具合です。これで大丈夫でしょう。
あとは台風本体が右カーブで日本に近づいてくる問題ですが、これが案外難しくて、実は私は、今もよく分かっていないのです。
(この稿、続く)