カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「当世本邦都会の保育園事情」②

 園庭が小さく遊具もないのは、都会の保育園として致し方ないでしょう。何しろ土地代がハンパではありませんから。園舎自体は適切な大きさかと思いますが遊戯室(プレイルームというらしい)は狭く、入園式では祖父母が遠慮しなければならないほどの狭さだったと聞きます(私たちは行かなかった)。
 ただしその他の設備は整っていて、私がシーナやアキュラを育てていたころとはまったく違います。それが時代の変化によるものか田舎と都会の違いなのかは分かりませんが。

【降園の作法】

 私は“お迎え”の担当でしたからそこから説明しますが、まず敷地内に入るところから違う。門扉の柱にテンキーボードみたいなものがついていて、そこに暗証を打ち込まないと扉が明けられないのです。

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 しかも入室のセキュリティシステムは三か所もあって、外の門扉、中庭に入る門扉、玄関の扉と4桁の暗証を三回も数字を打ち込まないと入れません。悪心に駆られた人間がフラッと入るという訳にはいかないのです。
 ロックを開いて園舎の中に入ると最初にやるのが、ホールでタイムカードに時刻を打ち込むことです。登園時刻はどうでもいいのですが、降園が午後6時を過ぎると「延長保育」の料金が発生するのでどうしても必要な作業なのです。

 続いて子どものいる部屋に行き、そこで一覧表に手で時刻を書きます。
 保育士さんが残っている子どもたちの人数等を把握するものらしく、私たちには二度手間ですが、タイムカードは一覧性がないので、やはり必要なのでしょう。

 子どもを受け取る前に、棚に並べられた連絡帳を受け取り、ロッカーの中の紙オムツの数を確認し、フックに掛かった汚れ物袋を取ります。こちらを先にやらないと、子どもが来てからではあれこれ気を遣わなければならないことも多く、忘れ物をしがちなのです(ということを最初の三日で学んだ)。

 子どもに声をかけ、名札を外して壁の「名札入れポケット」に入れて終了です。

 帰りはいちいち数字を打ち込まなくても手でロックを外せば出られます。けれどこれが案外難しく、最初の内は回転式のカギを90度回せば開けられることに気づかず、半回転させたり一回転だったりで結局表に出られず、外から来た人に開けてもらったりしました。
 出た後で忘れ物に気づいてもサッと戻るわけにもいかないので、面倒が先に立って諦めたりもしました。

 言い忘れましたが紙オムツの数を確認したのは翌日の“送り”の係(ウチの場合は父親のエージュ)が補充する必要があるからで、園によっては使用済みを持ち帰らなければならないところもあり、その場合は確認作業が不要になります。
 

【そう言えば昔は・・・】

 そう言えば、昔は紙オムツなんか使いませんでした。使っている人もいましたが私のところは徹底したケチなので布オムツで通したのです。
 朝、乾いた布オムツを何枚かもって出かけ、帰りは園で簡単に水洗いしてくれた使用済みオムツをポリバケツに入れて持ち帰ります。
 基本的に“迎え”は妻の仕事でしたが時には私が行くこともあって、そんな折は右手にシーナを抱え、左手にはずっしり重くなったポリバケツをぶら下げて、車まで歩いたものです。

 すっかり暗くなった帰り道、シーナが「デター」と言って空を見上げるので、何かと思ったら大きな満月が出ていました。
 誰かが「出た、出た、月が」と歌ってくれたので、シーナは満月のことを「デター」というのだと思ったのでしょう。懐かしい思い出です。

 ところで、さて先ほどちょっとお話しした連絡帳。

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 私が子育てをしていたころは単なるA6ノートの往復でしたが、孫のハーブのものはA5を少し長くした大きさのもので、左半分が家庭から、右半分に園からの連絡を記入すように書式が印刷されています(右図)。
 驚いたことにそれが二枚複写になっているのです。

 一日が終わって左右が書きそろったところでコピーは切り取られて園で保管されます。将来のトラブルに備えて、同じものを保護者と保育園の双方で持つという配慮なのでしょう。

 いいことなのか、世の中が悪くなっているということなのか、考えさせられるできごとでした。

(この稿、終了)