「誰も誇ってはならぬ」~新型コロナの数字から見えてくるもの③

 世界を大きく見ると、
 明らかに新型コロナに関して、強い地域性が見られる。
 その違いはどこから来るのだろう?
 数字を見ながら考える。

というお話。

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【死亡者の多寡――地域性を見る】

 昨日と同じグラフを載せます。ただし日付は一日進んで2020年6月9日、さらに東ヨーロッパの代表としてポーランドルーマニアを加えました。このふたつを選んだことには理由はありません。

 数値自体に大きな変化はありませんが、スウェーデンがフランスを抜きました。見落としはないと思うのですが、もしかしたら拾い損ねていてスウェーデンより上位の国・地域があるのかもしれません。しかし一応、世界第5位はスウェーデンということにしておきましょう。

 一時期は集団免疫をめざしながら途中で方向転換したイギリスやオランダが、決して良い成績でないことも記憶に留めておきます。
 その上で、昨日申し上げた、死亡者数の地域性について考えます。

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【世界を概観する】 

「この、ハゲー!」の元国会議員・豊田真由子さんの発言のポイントは、
  1. 新型コロナ感染を各国・地域ごとで見た場合、人口10万人当たりの死亡者が少ないのは日本だけでなく、アジア・オセアニアは押しなべて少ない。
  2. その中で言えば、日本は最も成績の悪いレベルだ。
    ということです。 

 2については昨日も申し上げましたがグラフで見ても一目瞭然で、日本・韓国・中国などの差はないも同然です。100万人あたりになおせば、「うちは7人だ」「オレのところは5人だ」などと自慢したりするのは愚かだということが分かります。

《東アジアから東南アジア・南アジア・オセアニア
 ざっと見て、東アジア・東南アジア・南アジア・オセアニアあたりまではほとんど同じで「死亡者は極めて少ない」と言うことができます。
 また日本の場合、新型コロナ感染で昨日までに亡くなった方は922人ですが、例えば2018年~19年のシーズンにインフルエンザで亡くなった方は3,276人と推定されています。それと比べてもずっと少ないことが分かります。

西アジア
 アジアも西アジアまで進むと様相が異なってきます。
 イランはかなり早い時期に感染拡大が起こり、続いてトルコも新型コロナ禍に襲われました。6月9日現在でイランの死亡者は8425人、トルコは4746人ですが、10万人あたりに換算するとそれぞれ1ケタ台に留まります。

《東ヨーロッパ・ロシア》
 北に上がって東ヨーロッパの国々も大雑把に西アジアと同程度。ロシアは感染者数でアメリカ、ブラジルに次ぐ世界第三位なのに死亡者は極めて少なく6千人台前半(6358人)、10万人あたりで4.4人にしかなりません。

《アフリカ》
 注目すべきはアフリカです。
 WHOは医療環境の悪いアフリカ大陸をとても心配していましたが、今のところ状況の悪い南アフリカ共和国でも10万人あたりで2.1人にしかなりません。
 もちろん今ピークに向かって拡大中の国もありますから今後の推移を見ないと分かりませんが、アルジェリアやモロッコはすでに第一波のピークを越えており、それがこれらの国の実力かもしれません。

南北アメリカ
 合衆国については昨日も書きました。世界最悪にもかかわらず広い国土に平均して感染者を出しているわけもありませんから、見かけほど弱っていないのかもしれません。
 心配なのは中南米で、ほとんどの国がひたすら感染者と死亡者を増やしている段階です。メキシコやペルー・チリなどは明らかに感染爆発の様相を見せていますし、ブラジルもまったく止まりそうにありません。止まらないまま、ブラジル政府は統計の発表を止めてしまいました。

 中南米は危険です。かつてのアステカ王国インカ帝国がスペイン人によって持ち込まれた天然痘で滅びたのと、同じようなことが起こらなければいいのですが――。

《西ヨーロッパ》
 西ヨーロッパを残してきました。
 グラフから見える西ヨーロッパの明らかな惨状は、それにしても何なのでしょう。
 ドイツ南部・フランス東部・イタリア北部の工業地帯は近年中国との関係が深く、中国からの大量の帰還者によって一気に感染が広げられ、太刀打ちできなかったのかもしれません。
 同じことは世界から孤立させられていたイランにも言えます。中国以外に結び付きの強い国がなかったからコロナも引き受けざるをえなかった――。

 それにしてもこの惨状は何なのか――。
 もしかしたら問題にすべきは「なぜ日本はこんなに死亡者数が少ないのか」ではなく、西ヨーロッパの国々及び合衆国は「なぜこうも大勢を死なせてしまったのか」なのかもしれません。

 

【各国は自分たちが持っている武器を最大限に利用して新型コロナウイルスと戦ってねじ伏せた】

 新型コロナ感染に対して日本が強かった理由を求めて、世界の国々の新型コロナ死亡者数をグラフにしてみましたが、答えらしきものは見えて来ません。

 中国は強力な都市封鎖と監視システムによって、韓国は感染者追跡システムと大量のPCR検査によって、日本は高い国民の衛生意識と優秀な厚労省クラスター班および保健所の献身的な働きによって、それぞれ第一波を封じ込めた、そんなふうに考えるのも一つの見方かもしれません。共通の何がかあるわけではないのかもしれないということです。

 台湾とベトナム地政学的な判断から中国を遮断することに躊躇なかった。中国・韓国・日本・ベトナム・インドはもともと「マスクの民」で(中国・インド・ベトナムは主として大気汚染対策から)、そのことが感染拡大を防いだ。アフリカの国々は国民が若く、平均年齢もかなり低いところから「若年層は重症化しにくい」という新型コロナの特徴の恩恵に預かった。

 東ヨーロッパ・ロシアは中国本土に足場を持つといった意味での深い中国との結びつきはなく、だから被害が少なかった。

――そんなふうに自分を納得させようとしても、では中南米はどうなのだ? アフリカは若い国と言っても中国との結びつきも尋常じゃないだろう? オセアニアはどう説明するんだ? と次々に疑問が湧いてきます。
 結局この大きな地域差を包括する説明は、いまのところないのかもしれません。
 
 

【下駄を履くまで、誰も誇ってはならぬ】

 新型コロナの教訓は、「下駄を履くまで、誰も誇ってはならぬ」ということです。この先どうなっていくのか分からない。
 今日、私の書いたこと(東アジア・オセアニアは良好、アフリカも意外といいなど)も、明日にはたわごとになってしまうかもしれません。

 これまで新型コロナ対策の手本とすべき国・地域として上がってきたのは、韓国、台湾、シンガポール、フランス、ドイツ、イギリス、スウェーデン。日本や、自薦の中国・トルコも入れればかなりの数になりますが、このうちいくつが今も手本としての地位を守っているのか――。

 誰が勝者で、その勝ち方は学ぶべき手本なのかどうかは、新型コロナ感染が終息してからでないと分からないことです。
 野球に例えれば1回の表裏が終わったくらいの段階で、ゆめゆめ「K防疫は世界標準になった」とか「日本モデルの勝利」などと宣言しないように。
 そんなふうに私は思います。
 
(この稿、終了)