「富岡製糸場で会った女(ひと)」〜富岡製糸場と横田英①

 遅ればせながら、3年前に世界遺産に登録された富岡製糸場に行ってきました。

 遅ればせと言うのは世界遺産登録から遅ればせということではなく、「ずっと、ずっと、ずっと以前から気になっていたのに行けなかった富岡に」遅ればせという意味です。どのくらい以前からかというと、(ブルゾンちえみ風に)
「35年!!」

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 ちょっとサバを読みました、正しくは32年ほどです。
 そのころ駆け出しの中学校社会科教員だった私は、明治維新の研究授業で「殖産興業」をテーマに選び、富岡製糸場についても相当突っ込んで勉強していたのです。そして群馬に残る製糸場の建物を一度でいいから見ておきたいと思って以来32年、世界遺産のブームの時ですら足を運ぶことなく今日に至ってしまいました。
 今回もたまたま別件で近くまできたので寄っただけで、わざわざ来ようという気持ちはもともとなかった。社会科教師として一流になれなかった原因のひとつは、こんなところにもあると思っています。
 面倒くさいのです。
 ドラえもんの「どこでもドア」でも使えればいいのですが、そこまで行き来する時間がもったいない、旅費がもったいない、行かなくても書籍やネットで多くのことがカバーできると思い込んでいる――そんなところです。

富岡製糸場

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 では実際に来てみた富岡製糸場はどうだったかというと、特に東置繭所二階(写真)が圧巻です。今は静謐な雰囲気で何となく凛とさせられる感じなのですが、100年より昔は大量に運び込まれた繭を工女たちが選別する場所で、おそらく大変な活気に満ちていたに違いありません。その様子も目に浮かぶようで、とても心動かされました。こういうことは実際に来てみないと分かりません。
 ただし正直に言いますと、今回は歴史にほとんど興味のない同行者がいて、バラバラに動くその人たちを束ねるのに忙しく(大人は子どものように簡単に言うことをきかない)、また折悪しく次々と入ってくるさまざまな電話やメールに対応しなければならないこともあって、じっくり見たのはいまお話しした東置繭所二階くらいで、あとは走り回っているうちに時間が過ぎてしまったというのが実情なのです。
 だからあまりよく分からなかった。
 また富岡製糸場自体、見学できるところが案外少なかったのです。

 ただその中でもう一か所、足の止まったところがありました。それは今月22日まで行われている「紅い襷展」のブース入り口です。

【紅い襷(たすき)】

 富岡製糸場のサイトのお知らせ欄に「『紅い襷展』好評開催中です!」と書いてあったのは覚えていたのですが、「紅い襷」が何なのかまったく知りませんでした。何か富岡の絹で作ったいわくある襷のことかな、くらいに思っていたのですが、どうやら世界遺産登録3周年記念ということでそういう題名の映画が作られたらしいのです(赤い襷〜富岡製糸場物語〜)。

「ああ、製糸場が舞台の青春映画かァ」くらいの気持ちで何枚もある写真パネルを眺め始めた私は、水島優という女優さんの演じる主人公の名前に気づいて心の中で小躍りすることになります。

横田英

 それは32年前、本の中でちょっと心惹かれた女の子の名前だったのです。

(この稿、続く)

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