カイト・カフェ

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「二つの国家の行く末」~死ぬまでに見ておきたい二つのこと①

 20年前に大病をして手術を受け、再発のことを気にしながら数年過ごしているうちになんとなく身辺も整理できてきて気持ちに余裕が生まれ、「これはもういつ死んでも何とかなる」「後顧の憂いなく黄泉の国に行けるな」と思うようになりました。

 その上で未練に思うことはあるか、やり残したことはあるのかと考えたら、思いついたのは「娘の花嫁姿が見たかった」とか「せめて息子の行く末がしっかりしてから」というようなことではなく、続編が噂されていた3本の映画、「ロード・オブ・ザ・リング」「マトリックス」「ターミネーター」の結末が見たかったな、そういうことでした。
 人生なんてそんなものです。

 歳を食ってくると先も見え、あと20年、30年生きようともできることはたかが知れている、今さらノーベル賞を目指すこともオリンピックを夢見ることもありません。当時はまだ40歳代でしたが教員として成し遂げられることにも限界が見えていました。

【さらに人生に未練はない】

 それから十余年、60歳を過ぎて社会的にも家庭的にもほとんど必要とされない日々を送っていると、長生きに何の意味も見出せなくなります。
 だからと言って早く死にたいとも思わないですが、悪い意味でこの先なにが起こるか分からない、家族に不幸が起こるとか、自分が面倒な病気になって周囲に迷惑をかけるとか、そういうことを考えると、ほどほどに幸福で非常に満足できている今こそ、死ぬには最良の瞬間、今死ねば心から幸せな人生だったと言えるそんな時期だ、と思ったりもするのです。別にだからと言って死にはしませんけど。

 その上でそれでも未練に思うことはあるか、やり残したことはあるのかと考えたら(あれ? さっきも似たような文を書いたな)、「映画の続編を観たい」と同じ程度で、二つの国の結末を観てみたい、そういうけっこう強い欲望のあることに気づきました。

 中華人民共和国、そして朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)です。

【中国】

 実は私の大学時代の専攻が中国近代政治史なのです。
 アヘン戦争から太平天国の乱、義和団の乱といったところから中華人民共和国の成立までの約100年間が、私の勉強の主戦場でした。そしてそうやってできた新国家は、今や世界第2位の経済力と軍事力をもつ大国で、押しも押されもしない世界の重鎮です。しかも歪んでいる。

 資本主義にどっぷりつかった社会主義国、抑圧に抑圧を重ねてようやく成り立つ多民族国家、200万人もの監視人を使ってネット規制を行い、様々な人権抑圧の上にかろうじて情報操作可能となっている高度情報化社会――これだけの矛盾を抱えていればいつ倒れても不思議はないはずなのにまるでつぶれる様子がない不思議な国。
 その国の行く末を、私は見ていたいのです。

 社会主義といえばソビエト連邦の歴史はおよそ70年(正確には69年)。中華人民共和国は今年で68年目です。
 もちろん時代が違いますし世界の趨勢も違う。さらにソ連崩壊の様子をつぶさに見て研究してきた中国が、おいそれと同じ過ちを繰り返すこともないと思いますが、今まさに終末のとば口に立っているということもありそうです。
 できれば私の生きているうちに、100年はもちそうな「普通の国」に変化していってほしいものです。

北朝鮮

 一方北朝鮮の方は先日行われた建国記念行事がだ69回、つまり中国より一足先にソ連崩壊と同じ年数を迎えたわけで、その分中国より先に大変革を迎えるかもしれません。

 昨日国連はこれまでで最大の経済制裁を議決しました。
 ひたすら制裁に制裁を重ねてきたわけですから直近のものが“最大”になるのは当たりまえなのですが、これでこの国の崩壊(ないし大変革)は、おそらく私の生きている間に起るだろうという目算がつきました。

「いつ死んでも未練はない状況」の半分が、まもなく達成されそうです。

(この稿、続く)