カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「バカが世界を動かしている」〜バカな子、オタクな子、意地悪な子

 たいていの男の子がそうであるように、18歳の私はとても神経質で弱気で、そして根性なしの情けない青年でした。
 その私に、今の私が駆けつけて何かアドバイスをするとしたら、それはこんなことです。
「そんなに思いつめなくてもいい。世界はキミが思っているよりはるかにダメなヤツ、いい加減なヤツ、だらしないヤツによって動かされているんだから」

「今の若い連中は世の中を舐めている」
 そういう言い方がされなくなってどれくらいたつのでしょう。もしかしたら今もそんな若者もいるかもしれませんが、私が気になるのはむしろ、臆病で傷つきやすく、あまりにも真面目できちんとした子たちです。
 私は彼らにも言っておきます。
「キミの周りには“バカな子”も“オタクな子”も“意地悪な子”もいるでしょ? 大人の世界だって同じなんだよ」

【バカな子】

 私がよく参考にする「JBpress」(日本ビジネスプレス:日本のウェブメディア)に、「目の前に迫ったトランプ退任、ペンス大統領就任〜予算教書で明らかになった"まさか"の無知無能ぶり」という記事があり、その中に次のような一節がありました。
「もしかしたら、トランプ大統領は)本当にバカなのかもしれない」
 私に言わせればこの記事を書いたあなた(伊東 乾:作曲家=指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督)こそバカなのかもしれない。
 アメリカ大統領がバカだなんて、今や山に行って穴を掘り、その中に囁き入れるような話ではありません。大声で叫び、心配している人が何人もいるのですから。今さら何を言っているのですか!

 そもそもFBIの長官をクビにしちゃだめだとか、ロシア疑惑で捜査対象になっていないからといっても潔白が証明されたわけではないとか、さらにそもそもロシア疑惑より前に捜査妨害が問題になっているのだとか、ド素人の私でも分かることが分からない。
 さかのぼって2月の「マー・アー・ラゴ」での夕食会の最中、北朝鮮のミサイル発射の報が入ってその場で協議し(そのこと自体がバカ、巻き込まれた安倍首相は気の毒だった)、そのあとの記者会見が悶絶ものでした。
 トランプは安倍首相にスピーチの順を譲り、あとからしゃくしゃくと出てきて、
「米国は偉大な同盟国=日本の背後にあって、100%これを支持する」

 私はその瞬間テレビに飛びついて叫んでました。
「バカかお前は! 北朝鮮のミサイルなんてもう何年も前から日本を射程内におさめてるんだ。いま発射されたのは米軍基地や将来のアメリカ本土を叩くためのものであって、標的はアンタなんだぞ、そんなこともわからんのか!」

 私が「バカかお前は!」といった下品な言葉を使ったのは、まだ初任で子どもの扱い方も知らなかったころ、生徒に対してやっただけです。以来40年近くまったく口にしたことがありません。

   アメリカ国民が選んだのだからそれなりの人物だろう、不動産業での成功者でもあるから一見無謀と見える発言や挙動の中にも、実は深い思慮があるのだと考えるのは間違いです。
 彼は親から引き継いだ不動産会社をつぶし、借金まみれの生活をコメディで立て直して、その名声で再び不動産を買い集めた天賦のお調子者です。
 そう思って彼の言動を見直すと、かえって見えてくることがたくさんあります。

【オタクな子】

 北朝鮮は国際情勢のどういうタイミングでミサイル発射を繰り返しているのか――長い間議論になっていましたが最近は「どうやら国際情勢とは関係なく、北朝鮮の実験計画にそって淡々と打ち上げているだけだ」ということで落ち着きつつあります。  私は最初からそう思っていました(ととりあえず言ってみる)。
 これは金正恩氏を一国の指導者、有能な三代目と考えるから間違えるのであって、単なるオタクだと考えると見えて来るものがたくさんあるのです。

 私の息子のアキュラも、小さなころからプチ軍事マニアの傾向があって「バンバン(幼児言葉で“拳銃”)」もたくさん持っていました。小学生の頃には家庭内に銃の密輸(おもちゃ屋さんから)を図って父親に見つかり、こっぴどく叱られたこともあります。

 大学生になって都会に出て、しっかり勉強をしていると思ったらサバイバル・ゲーム(大掛かりな戦争ごっこ)にはまっていて、毎週末、軍服を着て野山を駆け回っていたようです。
(ただしその際も勉強不足で、ネットオークションで手に入れた軍服は上着が米軍でズボンが中国紅軍というキテレツなもので、仮想米中戦のサバゲーでは参加者全員が“敵”という悲惨な目にあったみたいです)

 金正恩氏とアキュラの違いは持っている権力の圧倒的な差ですが、やっていることは同じです。要するに新しい武器が欲しい、もっと強いのが欲しい、打ってみたい、やってみたい、それだけです。
 “専門家”たちは「アメリカ本土に届くICBMを開発することでアメリカを話し合いのテーブルに着かせたいのだ」とか言ったりしますが、テーブルに着いたって話し合いが1ミリも進まないことは目に見えています。

 金正恩氏はきっと話し合いになんかに興味はない。
(ただしもちろん、核ミサイル開発のための資金を出してくれるというなら話し合ってもいいけど)

【意地悪な子】

 自分が小学生のころ、中学生のころ、そう言えば高校生や大学生だったころもそういう女の子はクラスにいました。もちろん教員として見て来た児童生徒の中にも必ずいた――。
 必要もないのに徒党を組み、常に内部で競わせ、放って置けばいいものを掘り返し、まぜっかえし、対立を煽っては常に自分は君臨している、あの、人柄の悪い女子のことです。

  その言動を見ていると何か意味があってやっているのではないことも明らかで、ただ本能的に対立を煽って自分が有利になる道を見つけ出し、何の邪気もなくそれに乗っかってしまうのです。
 本人は無邪気ですが、周辺はたまったものではありません。

 あまり詳しくは書けませんが、私にはトラウマがあります。
 私が小池都知事に怯え、反射的に身構えるのはそのためです、たぶん。