カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「真実はネットの中にある」④(終了)

  日本の場合、草創期のインターネットはゴミ溜めような場所でした。ガセネタが多すぎて役に立たなかったのです。まともな人はテレビや新聞、雑誌や書籍で語るに忙しく、ネットの方を覗いている暇もなかったのです。しかしそれはわずか数年のことでした。
 ネットの能力が知れ渡り、上質なコンテンツが雨後の筍のように立ち上がると、インターネットは非常に有効な情報伝達の手段として社会に定着するようになりました。
 旧来の質の悪いコンテンツも残りましたが、ある種の棲み分けができて、ページを開いただけでレベルが判断できました。これは素人のものだとか、悪質だとかいった勘が働いたのです。

 ところがここ数年はほんとうに見た目の質が上がり、内容的にも上質と見まごう文書が続々と出てきました。さらにそれを大手ポータルサイトが取り上げることで、昔だったら水底に沈んで見えなかったものが水面上に浮き上がってきたのです。

 一方ここ数年、ドナルド・トランプをめぐる報道を見ればわかる通り、マス・メディアの取材力・判断力は確実に落ちています(もしくは落ちていたことが明らかになった)。

アメリカはこの件でも先行していた】

 おそらくアメリカでは、これと同じことが10年以上前から起こっていたのです。
 今や合衆国のマス・メディア信頼度はわずか32%。民主党支持者で51%、共和党支持者となると14%しかないのです(昨年9月のギャラップ調査)。

 むべなるかな、
 昨日発表されたロイター/イプソスの調査では、ドナルド・トランプの入国規制について賛成する者が49%、反対が41%です。
 なんと賛成が反対を上回っている――テレビや新聞を見る限りここ数日間、合衆国は反対運動で燃え上がっていたはずなのに。
 これではマス・メディアが信用されなくなるのも当たり前です。

 私は英語ができないので探してみる気にもならないのですが、ネット社会にはトランプを熱烈に支持するコミュニティがいくつもあるはずです。
 かつて、「ヒラリー・クリントンはISに武器を売った」とか、「オノ・ヨーコがヒラリーとの性的関係を告白した」とか、「ローマ法王がトランプ支持を表明した」とかいった荒唐無稽が跳梁跋扈していた場所です。今回の入国制限についても無条件の支持を与えているはずの世界――。
 今回の件でニュース映像を見せられて落ち着かなくなった人々も、コミュニティのサイトやツイートを読めば、きっと納得し、安心できる材料を見つけ出したに違いありません。49%というのはその自信が示す数字です。そして彼らは再びヤンヤヤンヤの大喝采をトランプに与え、“合衆国のツンツン男”はその声に煽られて、今日も新しいネタを探すのです。

【日本はどうなっていくのだろう?】

 私もようやく日本のマス・メディア全般に、疑いの目を向け始めています。
 しかしそれでも全面的にネットに依拠しないのは、比較の上で、まだマスメディアに分があるような気がしているからです(いかにも年より臭い判断ですが)。
 他方、世の中には
「私たちは、スマホと大人になっていく、たぶん初めての人類だ! 」
と言って憚らない子たちが続々育ってきています。
 彼らは私がようやくたどり着いた迷いの沼を出発点として、ネットの世界を探索していくことになります。

 もしマス・メディアが現在のような無責任な報道を続け、ネットが量で対抗し続けるなら、早晩アメリカと同じような状況がこの国にも現れるはずです。
 そのとき子どもたちは私とは異なり、迷うことなくネットの海で必要な情報を拾い集めます。それが本当に悪意に満ちたフェイク・ニュースだとしても、マス・メディアの垂れ流すウソよりはましだと言わんばかりに――。

 私たちは子どもに、何を教えてあげられるのでしょう?