昭和歌謡とオタクが世界を救う」�@

 昭和歌謡がブームで小中学生でもテレサ・テン山口百恵を歌ったりしているとのことです。

 ただしこういうニュースは眉に唾を付けて聞くべきで、たいていはまだブームでもなんでもなく、その筋のプロが“ブームにしようとしている”“火をつけて儲けようとしている”といった段階であることが多いようです。もちろん実際にそれに夢中になっている人がいないわけではありません。けれどいつも言うように1万人に1人といった特殊な趣味を持つ人が1万2600人もいるのが日本です。昭和歌謡に夢中になっている人が何千人もいたって不思議はないので、その人数をもって“ブーム”とい言っても間違いではないのかもしれません。

 ところで三大昭和歌手(グループ)といったら誰を思い出しますか?

 そもそも「三大昭和歌手」といった言葉自体もないと思うのですが、敢えて言うなら、私は加山雄三とピンクレディとサザン・オールスターズをもって三大と考えています。日本の歌謡界を大きく変えた三人です。

 加山雄三は「本当に歌いたい歌というものは自分で作るものだ」ということを日本中に知らせました。それに触発されてのちに大勢のシンガー・ソングライターが世に出てきたわけで、加山雄三がいなければ一部は作曲に手をつけることもなく、世に埋もれてしまっていたのかもしれません。

 ピンク・レディの偉大な業績は小学生に購買力のあることを発見した点です。子どもを夢中にさせると親や祖父母が猛烈な勢いでレコードや関連グッズを買ってくれる――。その日以来、芸能人は小学生にもわかりやすい言動を心がけるようになります。要するに馬鹿になったのです。そう言って悪ければ馬鹿のフリもできないとだめだということになりました。

 サザン・オールスターズの偉業は日本のポップスを日本語から解放し、自由に解き放ったことです。サザン以降、歌詞は必ずしも意味あるものでなくてもよくなりました。曲が優れていて歌いやすければ何を言っているのか分からなくてもよくなったのです。そもそも桑田佳祐の歌い方では意味ある日本語でも聞き取れません。

 そのおかげでかなりアップテンポな曲でも平気で作られるようになり、複雑なテンポ・音階も苦にならなくなりました。おかげで日本の音楽は決定的に明るくなった――。

 それはそれでいいのです。私個人についていえば暗く沈んだ歌は好きではありませんし、酒だ、涙だ、別れだ、出船だなどといった曲はまっぴらで、歌うならカラッと明るく、体にズンズン来るようなものでなくてはなりません。未練より次の恋、悲しみよりお茶目、そういうタイプです。しかしそうでない人もいます。

 昔、山口百恵の「いい日旅立ち」を聞いて涙ぐんでいたのと同じタイプの人、久保田早紀の「異邦人」を歌いながら一緒に疎外感を味わうような人、そういう人は今もいるはずです。そういう人たちが自分を託せる曲、一緒に泣きたくなるような歌、そういうものはもうないのでしょうか?

                                  (この稿、続く)