カイト・カフェ

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「さまよい人の話」~惑星について学び直す

 日が落ちて真っ暗な道を走っていると、西の空に大きく輝く星が見えました。宵の明星、金星です。夕暮れになると真っ先に見える星で、太陽と月を除くと全天で一番明るい星にあたります。

 太陽系の惑星の中でも、地球よりも内側(太陽側)にあるものを内惑星と呼んで火星や木星などの外惑星と区別します。何が違うかというと、地球からの「見た目」が違うのです。地球から見ると内惑星は太陽とセットで、いつもそばにいます。ですからいかにも太陽の衛星と言う感じがします。ところが外惑星は動きが複雑で、太陽との関係が感覚的に分かりません。

 昼間、南の方角を見ても金星は太陽の明るさに飲まれて見えません。ただし太陽の左側(太陽の後ろ)にあるとき、金星は日没とともに姿を見せます。陽の光が見えなくなって、初めてその姿を現すのです。ただし翌朝、金星を見ることはできません。太陽の方が先に上がって来てしまうからです。
 逆に、金星が太陽の右側(進行方向)にある場合、金星は太陽よりも先に沈んでしまいますからこれも見えません。しかし翌朝、太陽よりも先に上ってきますから日の出までの少しの間、東の空に煌々と輝いて見えます。これが“明けの明星”です。そして日の出とともに陽の光に飲まれて見えなくなってしまいます。

 では、同じ内惑星である水星はどうかというと、これもまったく同じ動きをしていて、“宵の水星”も“明けの水星”は存在するらしいのです。けれど金星よりさらに太陽に近い場所にありますし、小さな星ですから目のよい人が意識して探さないかぎり見つからないみたいです。ちなみに私は見たことがありません。

 中学校の理科の時間に勉強したように、夜、決まった時刻に空を見上げると、すべての星々はほぼ同じ位置にあります。「ほぼ同じ」ですか角度にして毎日1度ほどずつずれていて、3ヶ月(90日)でほぼ90度、半年で180度移動してしまいます。つまり半年後、まったく異なった星座が天を覆い尽くしているわけです。春になってサソリ座が見えるようになるとオリオン座が見えなくなってしまうのはそのためで、夏の間、オリオンは太陽の方角にあって陽の光に隠され、見えなくなっているのです。

 ほとんどの星はそんなふうに規則正しい動きをしています。しかし七つの天体だけが説明のつかない不思議な動きをします。月と太陽と五つの惑星です。

 中国ではこの五つの星を、規則に従わない「惑う星」(=惑星)と呼んで占星学上の特別の地位を与えています。「陰陽五行説」は確実にここからきています。そして万物の元素と考えられた五行(木火土金水=もっかどこんすい)の名を、この星に与えました。

 西洋でも五つの惑う星に注目され、「さまよい人(=プラネッツ)」と呼んで神の名を与えました。マーキュリー(水星)、ビーナス(金星)、マーズ(火星)、ジュピター(木星)、サターン(土星)がそれです。

 天文学が進んで7番目から9番目までの惑星が発見されたとき、西洋の天文学者は迷わず神々の名を重ねました(「ウラヌス」「ネプチューン」「プルート」)。しかしアジアは困りました。陰陽五行の五つを使い果たしてしまったからです。
 しかたがないので西洋の言い方を参考に、ウラヌスは天の神だから「天王星」、ネプチューンは海の神だから「海王星」、プルートは冥府の神だから「冥王星」と言い換えました(しかし一番最後に発見された冥王星は、2006年、定義の見直しによって「惑星」の中からはずされています)。

 寒さが増すにつれて星の美しく見える季節になりました。もう一度天文を勉強しなおして、夜空の美しい星を眺めるのもいいのかもしれません。