カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「記憶の話」~物事をどう覚えるか

 最初から言っておいた方がいいと思い、「名前や顔を覚えるのが苦手です」とことあるごとに 言ってきました。ほんとうは他にも覚えられないことは多いのですが、魚の種類を忘れても失礼に当たることはありませんが、人間の名や顔を忘れるとなるとまるで誠意がないみたいです。しかしこれは誠意の問題ではなく、能力の問題です。ほんとうに覚えられないのです。

 ただし特別な人にはこんな言い訳を予めしておくというわけにいきませんので、その場合は大変な努力・・・というか「大」のつかない「大変な努力」、つまり「変な努力」をして記憶することにします。

 例えば「太田さん」はゴリラみたいな男性なのですが、この人のイメージに赤ん坊を背負わせ、ねんねこ半纏を羽織わせて手に風車なんかを持たせます。そこでようやく一つの諺が浮かびます。「負うた(太田)子に教えられる」
 稲葉さんという人がいます。この人にはバニーガールの格好をしてもらいます。全く似合いません。そして「バニーガール→因幡の白ウサギ→稲葉さん」ということになるのです。

 ウケねらいの冗談ではありません。本気でやってようやくこれが覚えられます。妙であればあるほど、関係性が薄ければ薄いほど覚えやすいのです。

・・・と、こんなバカなことをやっているのは自分だけかと思ったら、なんと先週の「ためしてガッテン〜脳若返り!魔法の呪文 記憶力で東大生に勝つ」で記憶コンテストの名人たちが同じようなことをやっていました。人名記憶の競技では、例えば「ローズ・ブラウン」という名前を覚えるのに、写真の女性の口に「茶色のバラ」を咥えさせるわけです。「茶色のバラ」というのがミソで、これがローズ・ホワイトといった普通のバラだったらかえって記憶しにくいのかもしれません。

 記憶力というのは実は二つの能力から成り立っています。ひとつは文字通り記憶する力、インプットの能力です。もうひとつはいわば再生力、アウトプットの力です。忘れてしまったことの内容を指摘され、「ああ、そうだった!」と“思い出す”のは、まさにインプットは正常で記憶は脳内に貯蔵されているにも関わらず、アウトプットが不十分で“出てこない”ことを証明しています。若いころから「オレは記憶力は抜群なんだけど再生力に難があってなあ」などと自嘲的に言っていたのですが、これはまんざら間違いではなかったようです。番組では “覚える能力”はほとんど衰えないのに対し、“思い出す力”の方は年齢とともに衰えていると言っていました。老化による記憶力の低下は、実は再生力の低下なのです。
 そうなると「あとで検索しやすいように覚えておく」ことが、結果的に記憶力を高めることになります。記憶力コンテストのアスリートたちはどうやって記憶を保持し、引き出しているのか――。実はそのやり方は世界共通なのだそうです。

 どうやるかというと、自分が一番慣れ親しんだ動き(家に帰って着替えをしてテレビの前に座るまでとか、家から会社までの道のりとか)のそちこちに、異常な形でそれらを配置してイメージをつくるのです。例えば買い物リストを覚えるのに、家の入口大きな「桃」があって入るの邪魔しており、階段には大きなカットバンが貼ってある、階段を昇りきったところにたくさんの「枕」、ピアノの上には大きな「ごはん」といった具合です。
 脳の中にある「海馬」は「場所細胞」とも呼ばれ、場所や位置に関する情報をかなり強く保持しています。その頑固な場所情報に不安定な記憶情報を結びつけるのです。

 一度試してみたいとは思いませんか? 番組ではお年寄りが次々と高得点をあげていました。