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「世界人口70億人の時代」~飢餓を発展途上国に押し付けても、先進国は生きていく

 国連の人口統計によると本日10月31日、世界の人口は70億人を越えるそうです。世界人口が60億人に達したのは1999年だそうですから、わずか12年で16%も増えてしまいました。これからの世界を考える上で重要な要素でしょう。

 

 人口がそれだけ増えるとなると、まず危惧されるのが食糧不足です。よく言われるように「人口は等比級数的に伸びるが、食糧生産は等差級数的にしか伸びない」からです。国連食糧農業機関(FAO)は、2050年までにさらに20億人増えるとみられる世界の人口を満たすためには、食糧生産を70%も増やさなくてはならないという試算を発表しています。しかしそれは不可能です。したがって人口増加による食糧不足は100%確実に来ます。

 

 けれどだからといって、日本国民が飢える可能性はほとんどありません。これほど食料自給率が低くても日本が金持ち国である限りは、“買ってくればいい”のですから。

 ここに飢餓問題のやりきれない現実があります。

 

 実は、現在の世界の穀物生産はむしろ過剰なのです。小麦や米などの穀物だけで全人口に毎日3500カロリーを提供できる量が生産されています。野菜や豆、果物、肉類、魚なども加えると、一人当たりに毎日2kg近い食べ物があるといいます。しかしそれにもかかわらず飢餓地帯がなくならないのは食料が偏在しているからで、こうした状況が変わらない限り、食糧危機は特定の地域・国家でしか起こりません。

 

 発展途上国の中には外貨獲得のために自国民の飢餓を無視して、外国に食料を輸出する国があります(これを飢餓輸出と言います)。他方で賞味期限切れや食べきれない食事をどんどん捨てている国があります。いかにも不公平な話です。

 

 世界の人口増加にともなう食糧危機よりも、さらに喫緊の課題があります。それは水の問題です。

 

 水の利用量は2007年から2025年にかけて、発展途上国で50%、先進国で18%増える見通しです。世界のいたるところに水はあるように思われますが、しかし地球上の水の97.5%は塩水で、残る2.5%の真水の3分の2は凍結しており、実際に使える水はそう多くありません。そのわずかな水資源を90億人が争奪するのです。

 

 また水は食糧生産とは異なり、水源を持つ国で止めてしまうと下流域の国で枯渇してしまいます。例えばイラクとシリアを流れるチグリス川の水源はトルコにあります。したがってトルコが潤沢に水を使ってしまうと、シリア・イラクで深刻な水不足が生じます。これは戦争の十分な根拠となります。

 

 世界の人口は、2050年ごろに90億人を越えてそれから急速に減少すると予想されています。したがってある意味ではそこまでが勝負なのです。その間に日本が日本自身に何ができるのか、日本が世界に対して何ができるのか、真剣に考え対処していかなければならないはずです。

 

 なお今回の発表によると2011年の国別人口の1位は中国の13億5千万人、2位はインド(12億4千万人)、3位はアメリカ(3億1千万人)で、日本は10位(1億2650万人)でした。またインドは21年には人口が14億人に達し、中国を抜いて1位になると予測されています。一方、世界人口が90億人を超える2050年時点で、日本の人口は世界16位に落ち込む見通しです。