カイト・カフェ

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「新型コロナ感染の世界地図が変わる」~新型コロナのデータに見る世界の今①

 新型コロナ・パンデミック以来、世界は外国への関心を失ってしまった。
 しかしその間も世界は動いている。
 こと新型コロナウイルス自体に限っても、
 その様相は刻々と変化しているのだ。

という話。

f:id:kite-cafe:20200909063102j:plain(「世界地図とガラスの地球儀」フォトACより)

 
 

【余裕を失った世界】

 昨日は「孫に会えない」「友だちに会えない」と個人的な愚痴ばかり言っていましたが、その間も世界は動いています。
 香港では6日、違法なデモに参加した疑いなどでおよそ290人が逮捕されたといいます。買い物来た12歳の少女まで拘束された――。
 一方イギリスではジョンソン首相がEUとの自由貿易協定締結に向けて、最後の交渉に出かけました。
 どちらもビッグニュースで、前者については在日本中国大使館前で大規模な支援デモが行われたり、後者については各国の報道記者が大挙してロンドンに向かったりしてもよさそうなものですが、単に番組で取り上げられないだけなのか、どちらの噂もまったく聞こえてきません。
 徴用工問題やGSOMIAでいよいよ決戦の秋かと思われた8月を、日韓ともに何ごともなかったかのようにやりすごしてしまいました。
 各国みんな余裕がないのです。

 報道番組も新型コロナと台風と、総裁選を扱えば枠が埋まってしまう感じで、そんな日本はもちろん、世界中の国々は自国と自国民について考えるのに精一杯です。外国のことなど考えている暇がありません。
 
 

【新型コロナが目に見える国】

 考えている暇がないと言えば、例えば現在、新型コロナの感染者と死亡者が一番多い国はどこか知っていますか?
 アメリカ合衆国――もちろん正解です。
 2番目はどこでしょう? ブラジル? それともインド?
 感染者についてはインド、死亡者についてはブラジル、それが答えですが、そこまで正確に言える必要はないでしょう。この三カ国の状況が飛び抜けて悪いということを知ってさえいれば、それで十分です。順番なんて簡単に変わってしまいますから。

 では人口10万人当たりの感染者・死亡者が一番多い国はどこでしょう?
 これはあんがい深刻な問題です。単位人数あたりの感染者・死亡者が多いというのは、新型コロナが目に見える形、肌で感じられるところにあるということです。その数値が高いほど感染は身近なものになります。

 インドなどはいくら死亡者が多くても(世界第3位、7万2000人ほど)、14億人の人口に飲み込まれると10万人あたり5.30人にしかなりません。イタリア(58.26人)の十分の一以下です。人口の偏りを考えなければ、「どこに死者がいるの?」くらいなものでしょう。

 世界で最も10万人あたりの死亡者が多い国は――少し熱心なニュース・ウォッチャーならすぐにベルギーと答えたはずです。
 日本も現在進行形の第2波によってついにその数が「1人」を越え、「1.09人」にまで増えてしまいましたが、ベルギーの場合は86.9人、日本のざっと80倍にもなるのです。
 国土は日本のわずか8%ほど、東北地方の南部3県(宮城・山形・福島)を合わせた程度の面積で、そこに1万人近く(6日で9907人)の死亡者がいるのです。もちろん人口は都市に集中していますから一時期は「あそこでも死んだ」「ここでも亡くなった」といった話がざらだったに違いありません。私はベルギーのことを考えると、心を痛めざるをえませんでした。
 ところが最近、その記録が破られたのです。
 
 

【新型コロナ感染の世界地図が変わる】

 現在、人口当たりの死亡者が一番多いのはペルーで、89.69人になります。中南米は総じて状況が悪く、チリ・ブラジル・メキシコ・エクアドル・コロンビアなどがペルーのあとに続き、一時期は絶望的なまでに高い記録と思われたイギリス・スペイン・イタリアの記録を今や抜き去ろうとしています。
 ブラジルについては、悪魔的な大統領と感染者・死亡者の絶対数が多いところから多少はニュースになりますが、それ以外の国々様子は全く聞こえてきません。
 地球の裏側の国々で、日本との関係も比較的薄いからなのかもしれません。

 他にも、データをつぶさに見ると、いくつかの点でこれまで常識のように思われていたことが、そうではなくなっている事実に気づかされます。
 例えば、新型コロナ防疫成功国として長いこと死亡者ゼロを誇っていたベトナムも、いつの間にか死亡者数35人になっています。初めての死亡者(2名)が発表されたのが8月1日。その二日前には奇しくも日本の岩手県で県内初の感染者が出ています。こちらも2名同時でした。

 日本とともに感染第一波を短期間で凌ぎ、5月中旬で感染者7000名あまり、死亡者は100人未満で防疫成功国のひとつに上げられていたオーストラリアも、いつの間にか感染者26000名あまり、死亡者は750人ほどになっています。人口が日本の五分の一程度の国ですから、10万人あたりの死亡者数は2.99人と日本の2.7倍ほどにもなっています。
 しかしそんなことにも私たちは気づいていません。外国のことですから。

 私たちはこれまでもそんなふうに、外国に対して冷淡だったのでしょうか? そうではありませんよね。それもコロナのせいです。
 しかしこの辺りで一度立ち止まって、各国の様子を見て見ようではありませんか。

(参考)「新型コロナウイルスによる10万人あたりの死亡者数」(自作)

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取り上げた国や地域の選択には、特に意図したものはありません。