カイト・カフェ

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「フルカラーの世界」~牛が色盲だって、なぜわかったの?

 子どものころ「名犬ラッシー(もう知らない人の方が多いだろうけど)」の知能指数は小学校3年生並み」という話を聞いて、小学校3年生はまだしもラッシーの知能指数ってどうやって計るのだろうと不思議でならなかったことがあります(今も分からないけど)。

 同様に、「ウシは色盲だから赤を識別できない。闘牛のウシが赤い布で興奮するのは、赤だからではなく,ヒラヒラさせるからだ」という話を聞いたときも、どうやってウシの目に映る風景のことを知るのだろうとほんとうに不思議でした。こうした疑問は、大切に抱えているといつか答えに出会います。
 ウシの目の話は、疑問を抱いて20年目くらいに答えに会いました。

 実はウシは赤緑色盲(せきりょくしきもう)といって赤と緑の区別がつきにくいながら、色の識別はできているらしいのです。もちろん青とか他の色も識別できます。なぜそんな細かなことまで分かるのかというと、解剖学的にそうなのです。

 ヒトの場合、ものを見ることに関わる細胞は、大きく桿体細胞と錐体細胞の二つに分けられます。桿体細胞は字のごとく桿(さお)のようなかたちをした細胞で錐体細胞の方はその桿の一方が錘(すい)になって尖っています。
 錐体細胞はさらに三つの少し形の違ったものに分類することができます。
 その4種類の細胞がどういう働きをしているか―それはその網膜を持っていた人の個性(ある人は色の識別がまったくできない、ある人は緑と赤の区別がつきにくい、ある人はまったく目が見えないなど)と対応させていくと、統計的に分かってきます。

 それによるとまず、桿体細胞は非常の感度が良く、わずかな光でもものを認識できます。しかし色を見分けることはできません。
 それに対して錐体細胞は感度が悪く、相当な量の光がないとものを感知することができません。ただしこの細胞は色に反応するという極めて優れた性質を持っていて、赤色に感度の良い赤色錐体、緑色に感度の良い緑色錐体、青色に感度の良い青色錐体……つまり光の三原色にそれぞれ反応し、三つが同時に働くことですべての色彩を認知するのです。すごいですね。
 ただし夜になると錐体細胞はほとんど働きませんから桿体細胞だけでものを見ます。だから夜の風景は限りなく白黒画面に近づいていくのです。

 ウシの目は、ヒトとほとんど同じでありながら、緑色を感知する緑色錐体細胞がまったくありません。そこで赤緑色盲だと想像されます。同じ目はウマやネコやイヌなど多くの哺乳類が持っています。

 では魚や両生類、爬虫類や鳥の目はどうなっているのかというと、これらの生物はヒトよりももっと優れていて、第4の錐体細胞で人間には見えない紫外線も可視光線として見ているらしいのです。

 ただし同じ鳥類でも住む場所や習性によって目の構造も異なっているようで、夜行性のフクロウやミミズクの網膜は桿体細胞だけでできています(これを桿体網膜という)から夜に圧倒的に強く昼はあまり見えません。逆にスズメやヒバリなど日中を生きる鳥たちは錐体網膜といって4種類の錐体細胞だけでできていますから、日中は色鮮やか世界を飛び回りしかし夜はまったく見えない、つまり“鳥目”なのです。

 魚もカツオやマグロ、サメ類には色覚がなく、コイ、フナ、ブラックバス、スズキ、マダイ、サバ、アジ類等は色覚を持つといわれています。深海魚などはおそらく桿体網膜でしょう。

 

 そう思ってみると、色覚のある生き物たちは色鮮やかな場合が多く、色覚のない動物たちはみな地味で黒と白、そして白く輝く銀色くらいしかないような気もします。

 

*昨日の「左右上下逆さめがねの実験が終了して、晴れてめがねを外したとき何が起こったか」の答えは、「しばらくは現実の風景が上下左右逆さに見えて軽い船酔いの感じがあった。しかし数時間もしないうちに正しい映像を取り戻した」です。何十年もそれで生きてきたのですから、回復の方は早いみたいですね。