カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「蔓延するエセ科学」~おかげで教師の指導力は落ちたことになっているではないか

 早起きの効能のひとつロクなテレビ番組がない、ということです。おかげで深刻なテレビ人間だった私も、家での仕事が十分できます。ところが・・・
 先日うっかりつけたテレビのせいで、ここのところ30分ほどの朝の時間が奪われてしまっています。それは午前4時からやっているNHKの「視点・論点」という解説番組です。今朝のテーマは「まん延するエセ科学」でした。

 マイナスイオン効果というものが宣伝に使われたり、マグネシウムが体にいいとかでネックレスが売れたりとか、科学的な根拠のまったくないものが広く蔓延し、それだけならまだしも学校教育の中にまで入り込んで間違った知識が更に広がっていく、というような話です。
 例に上げられたのは、「ゲーム脳」について、そして「水に向かって『ありうがとう』と言い続けると、水の結晶がそろったものになり、『バカヤロウ』と言い続けると不ぞろいのものになる。だから挨拶はしっかりしましょう」といった道徳の授業が行われているという話です(知ってました?)。解説者は、水の結晶というのは氷じゃないか、と噛み付きます。
 しかしエセ科学を広めているという点では、われわれ教師よりもNHKを含むマスメディアの方がよほど罪が深いじゃないかと、私は反射的に思います。

 国際的な学力比較で日本の順位が落ちたと言ってもそれで学力が下がったかどうかは分かりません。他の諸外国が延びただけなのかも知れないのです。
 仮に下がったとしても、それが教員の指導力低下のせいだなんて、どこで科学的な証明が行われたのでしょう? 平成の猛烈な難試験を勝ち抜いたとんでもなく優秀な教師が、私の頃に比べれば、これまたとんでもなく豊かな研修を受け続けて行っているのが、現在の教育です。それで指導力が落ちるなら、研修制度自体に問題があるとしか考えようがありません。やればやるほど指導力の落ちる研修が行われている、そういうことを科学的に証明する必要があるでしょう。
(でも本当はそんなバカな話ではなく、常識的に考えれば、子どもや子どもを取り巻く環境が変わったから勉強しなくなった、だから学力は下がった、ということになりそうなものですが)

 かつて「不登校の子には、学校の『が』の字も言ってはならない。登校刺激を一切控えることが不登校を治す唯一の道だ」といったことが盛んに流布され、登校刺激を加え続ける教師は鬼畜のように非難されました。ところが今は「必要な時期に、適切な登校刺激を与えることは重要」・・・おまけに「教師はバカだから、そんなことも分からない」がついたりします。
 マスメディアが無責任に流した「登校刺激悪玉説」のおかげで、完全不登校にならずに済んだたくさんの子どもがいまや引きこもりです。こんなエセ科学のために犠牲になった子どもたちのことを考えると、水の結晶なんてのん気な話です。

 さて、今日は懇談会最終日。私たちの目の前にいるのは、テレビでたっぷりと教育学を学んできた人たちかもしれません。そうした人々を相手にする以上、私たちもたっぷりと本物の教育論を持っていなくてはならなりません。
 さあ、がんばりましょう!!