カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「健康を生み出す努力が健康を阻害する」~ものごとの考え方①

 きつくなったズボンに体を合わせようと、
 筋トレ・ジョギングを始めて10か月。
 まだ目標は達成できていないが、方向は見えてきた。
 しかし運動は、同時に目標を阻害する要因も生み出すようだ。

という話。

f:id:kite-cafe:20200129063115j:plain(「脚3」PhotoACより)

 

【ズボンを履くために始めたジョギングの顛末】

 昨年の4月から1日置きのジョギングを始めてまもなく1年になります。
 きっかけは腹周りがメタボ基準を越え、昔、履けた十数本のズボンがまったく履けなくなってしまったからです。中には新しいものもあって、捨てるにはあまりにももったいない。
 その十数本を履けるようにしたいというそれだけの理由で、一昨年、まずテレビ体操と腹筋運動を始めたのですが、若いころとは違ってまったく減りません。そこでジョギングなのです。

 ウォーキングではなくジョギングにしたのは、「後期高齢者じゃあるまいし、のんびり歩いたって腹が減って余計に食べるくらいがオチだ」という友人のアドバイスがあったからです。一日置きにしたのは「筋肉は一日破壊し、一日修復することで増える」という、これも別の友人のアドバイスによるもので、おかげで筋トレとジョギングを交互に行う羽目になってしまいました。
 年を取ると健康に関する助言者は次々と出て来ます。

 

 【頑固者はルーティーンワークが得意、望外な収穫もある】

 運動は大嫌いなのですが、私は「ケチでガンコ」な性格なので、「ズボンを棄てないためのルーティーン・ワーク」は生活によく馴染みます。10カ月も続けていられるのもそのためです。
 ただし1日たりとも楽しいと思ったことはありません。腹周りもまだズボンの9割が履けないままです。

 実は腹囲が減らないのも当然で、テレビ体操にジョギングと筋トレを組み合わせる40分間の運動は、調べたら熱量でせいぜいが200kcal、ご飯一杯分(269kcal)にもなりません。これでは減らしようがありません。
 体脂肪率は20%弱に減りましたから、脂肪が減って筋肉が増えるという面もあると思いますが、体重全体は10カ月で3㎏減っただけ、腹囲も3cm減りましたがまだまだメタボです。
 1年近く毎回泣きながら頑張っているのに、成果はあまりにも小さい。

 ただし望外のこともあって、歩くことがさっぱり苦にならなくなった。近くのコンビニに行くにも以前は自家用車に頼っていたのが、
「カギを開けて車に乗り込む手間を考えたら、歩いた方がいかな」
と思えるまでになっています。
 さらに良かったのは観光旅行や美術館巡りといった長距離を歩くことが予定される場合でも、気が重くならずに済むようになったのです。どんなに歩いてもたぶんへばらない――。
 近々、息子の赴任先である九州に遊びに行くことになっていますが、単純に楽しみにしていられます。

 筋肉には保水機能がありますから熱中症にもなりにくく、実感はありませんが代謝もよくなって健康状況も上向いているに違いありません。いまのところ血糖値や血圧にも大きな変化はありませんが、これから良くなっていくでしょう。

――と、いいこと尽くめだったのですが、ここにきて大きな問題が出てきました。
 ウオノメが復活した。

 

 【私のウオノメ前史】

 10代のころ踵の高い靴が流行ったことがあって、それを数年履いていたら左右の足の中指の付け根当たりに大きなウオノメができるようになり、それが30年以上も続いた、私にはそういう悲しい病歴があります。
 特に教員になってからは状況が悪く、さまざまに薬を使い、血の出るまでナイフで削ってもついに完治しない。

 お医者さんからは、
「歩くからいけない」

 意外かもしれませんが教職というのはけっこうな歩き仕事・立ち仕事で、職員室と自分の教室を往復し、教科担任としてのあちこちのクラスを回り、清掃指導に部活指導、そんなことをしていると、日に最低でも1万3000歩くらいは歩いてしまうのです。「今日は少し大変だったなあ」と思う日で1万6000~1万7000歩ほど。教室が3階だったりすると上下にも激しく移動します。足を休めている時間よりいじめている時間の方が長いくらいです。

「Tさん」
と医者は続けます。
「極端な話、寝たきりになれば治療をしなくても1~2カ月で完治します。けれど生活が戻れば半月で復活します」

 そういうことで結局、現場にいる間じゅう治らなかったのですが、それが管理職になって歩く距離が減ったとたん、たぶん1年足らずで完全に治ってしまったのです。10年余り以前のことです。
 三十数年苦しんだウオノメが一年足らずで治って、さらに十年余りも穏やかな両足で生きて来られた――それが私の魚の目前史です。そこに「一日わずか30分間のジョギングを一日おきに10カ月続けたら元に戻った」という項目が加わったわけです。少しもうれしくありません.
 


【悩ましき課題】

 思えば古いズボンが履けるようになるための運動で、しかし付随的に望外の利益があり、全体として良い方向に進んでいたにもかかわらず、それを阻害する“ウオノメ”が復活してきた。
 ジョギングをやめて元の穏やかな足を取り戻すか、三日に一度はナイフで足裏を削り落とす昔の生活に戻って続けるべきか、運動の質を下げて“ウオノメ”の成長を計り、運動を続けながらも“ウオノメ”ができないレベルを探るのか――悩ましいところです。

と、そこまで考えたとき、私は急にあることを思い出したのです。

(この稿、続く)