カイト・カフェ

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「何かとんでもないことが起きそうな気がする」〜日本の就活ルールが変わる 1

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 先週、経団連の中西会長は企業面接の時期などを定めたいわゆる就活ルールについて、2021年春に入社する現在の大学2年生から採用しない方針を発表し、正式に決まりました。これについて私は深刻な不安を感じています。

【会長は快調に語る】

 中西会長は8日、NHKのインタビューに応じて、この決断は採用における大企業と中小・外資の不公平といった問題ではなく、広く人材確保に関する問題意識から来たものであることを明かしました。その上で、企業が一斉に社員を採用する「新卒一括採用」が人材の均質性を生み出しているが、
「日本の人材がわりと均整で、均質的な文化の中でそれなりに激しい競争をするという仕組みが、もうグローバルな環境の中ではあまり有効ではなくなってきている」 「いろんな多様性ある人が集まってきて、いろんなものの見方をぶつけ合う中で、新しい会社の在り方や社会の在り方、そして自分たちのビジネスの在り方を考えることが非常に重要になってきている」
とおっしゃっています。

 さらに、求められるのは「語学」と「専門性」、多様な文化を理解できる「教養」を備えた人材だとし、
「もっと大学の教育それ自体に、社会や企業も含めて非常に関心持って、世界に通じる人材を育成していくという高らかな目標掲げて、努力してもらわないと。文系だろうと理系だろうと、最低限のリベラル・アーツ(一般教養)を勉強してこないと困る」
と大学教育の在り方にも疑問を呈しています。

 一見ごもっともなご意見ですが、ここには大きな問題が含まれています。それは、 即戦力として「世界に通じる人材を育成していく」ことのできている国は、世界中どこにもない
からです。

【若者がそのまま役に立つ国なんかない】

 もし大学教育によって若者が即戦力となる国があるとしたら、そこでは高給で動きの悪い中高年労働者はどんどん首を切られ、安価な若者に取って代わられるはずです。日本と違って海外の企業は人を捨てるのにためらいがないから、簡単にやってのけるでしょう。
 しかし世界中のどこの国を見ても、若年失業率は一般の失業率に比べて有意に高いのです。それもとんでもなく高い。国によっては一般の3〜4倍もなったりしています。

 スペインやギリシャでは若者の半数近くが職を持たず、フランスやスウェーデンでも若年層の失業率は20%を越えています。
 経済成長の著しい中国だと若者の失業率も12%ほどで抑えられていいますが、人口14億人の12%ですから半端ではありません。大卒の失業者だけでも820万人もいて、それが今後も増加してくと予想されている中、コンビニなどはITによって全自動化し、若者はアルバイトからも遠ざけられているのです。(日本は若年失業率5・3%、2016年)

 スペインやフランスは知りませんが中国の学生が極端によく勉強することは知られています。その中国の大学生にできないことが、日本の大学にできるはずがありません。どんなに勉強したって社会の即戦力になれる大学生などごくわずかなのです。普通はどこの国でも、みな中途半端なのです。

 その中途半端を一括採用し、企業内で丁寧に育て上げたのが日本的企業経営・人材確保術でした。中西経団連会長はそうした先輩起業家たちの誠意と努力を足で踏みつけ、グローバル・スタンダードに合わせようとしているのです。

 経団連はこれまでの期限付き一括採用をやめ、通年採用に踏み切ろうとするみたいですが、そうなると諸外国がおこなっているように、「世界に通じる人材」を大学や高校の外に世界に探すしかなくなります。

【人材は学外にいる】

 学校の外の世界とは何か?
ひとつは日本の経営者が口をそろえて言っている年功序列型の終身雇用制度を廃し、労働流動性を高める――そこから生まれるてくる転職市場です。昨日まで企業で働いていた人ですから、(無能でクビになった人以外は)間違いなく即戦力です。  さらにもうひとつは外国の労働市場
 アメリカのシリコンバレーがインド人に支えられていると言われているように、日本も海外の頭脳を積極的に活用する。――実際に今月初めの内定式ではメルカリや楽天が大量の外国人を雇い入れたと評判になりましたが、日本人ではなく外国人に頼るわけです。

 思えばグローバル社会では中西会長のおっしゃるように語学(実際には英語)が優先されます。日本語など片言でいいのですから、バイリンガルな日本人の出現を待つより、英語のできる外国人を連れてきて、日本語を学ばせる方が早いはずです。  彼らの多くは外国の大学を6月に卒業してきます。ですからその意味でも通年採用でないといけません。

 いずれにしろ日本の若者の出る幕は少なくなります。特に優秀な若者でない限りは。
 こうして失業が若者に押し付けられる世界標準に、日本もようやく追いつくのです。企業家にとってはメデタシメデタシです。

(この稿、続く)