「普通の学生、普通の企業」〜日本の就活ルールが変わる2

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 アメリカというのは、能力さえあれば何度でもやり直しの効くチャンスの国だと言われます。最近だいぶ状況は変わりましたが、それに比べて日本は18歳の時の能力、いわゆる学校歴がすべてを決めてしまい、三流・四流の大学を出た者に再挑戦の道はないという言われ方もしました。

 しかし社会人になった時の一番幸せが定期考査のないこと、もうこのさき選考されることがないこと、だった私のような人間には、果てしなく再挑戦できるアメリカのような社会が必ずしも幸せだとは思えないのです。

 

 

【インタビューされた学生の不思議な発言】

 今回の経団連の決定(就職活動の開始時期や内定時期を示すこれまでの就活ルールをやめる)に関して、ニュース番組のインタビューを受けていた学生が妙なことを言っていました。

「就活の期間が延びるとそれだけチャンスが増えるからボクは賛成です」

 一瞬なんのことかわからなかったのですが、要するにこの学生は現在の制度では期間が短すぎる、3月・4月から経団連に属さない中小・外資の企業を回り、6月から大手企業を回って8月末までに決めるとなると説明会や就職面接を受ける企業の数が限られるじゃないか、と言っているのです。

 そうなるとこの学生、どの程度の期間就職活動を続ければ満足できると考えているのでしょう?

 

 

【就活ルールがなくなってもエリートは困らない】

 一般に現在の就活ルールがなくなると各企業・団体は一斉に青田買いに走り、採用面接や内定の時期は一気に早まると考えられています。

 

 現在でも経団連に属さない企業は前倒しで求人活動を行っていて経団連加盟企業の中からもルールを破るところが出てきていますが、それとて限度があります。大学1年から内定を出すと言われているファーストリテイリングのような企業は例外的で、ルールに従わない場合でもほとんどはおのずと自制的な求人活動を行っています。

 

 しかしそれがなくなるといわば無法地帯ですから、当然先回りは加速します。高速道路で制限速度を守っている車はほとんどないからなくしてしまえというのと同じで、歯止めがなくなってしまうのです。

 

 大学1年生が企業の草刈り場になり、優秀な学生は入学と同時に就職が決まってしまいます。

 そうなると学生は4年間遊び暮らしてしまうという考え方もありますが、必ずしもそうはならないでしょう。超求人難時代とか言いますが実際に本気で困っているのは運送だの建設だのといった業界で、今でも人気企業は就職するのが難しいのです。

 

 いったん1年生に内定を出した企業は4年間、丁寧に関係を保って、必要な勉強をしてもらえばいいのです。その場合は今まで企業が経費を使って行っていた社員教育を大学に肩代わりさせることもできます。学生の方も将来確実に役立つ勉強を選択的に行うのですから、過重にならない限りは喜んでやってくれるでしょう。

 困るのはあまり優秀とは言えない普通の学生たちです。

 

 

【普通の学生、普通の企業の末路】

 能力のないものは切り捨てても仕方ないと言ってしまえばそれまでですが、1年生の最初に内定のもらえなかった学生はそこが就活のスタートで、延々と就職先が決まるまで大学生活と就活の二足の草鞋を履かされることになります。

 先のインタビューの学生は「就活の期間が延びるとそれだけチャンスが増える」と言っていましたが4年に及ぶ就職活動は計算に入れていないでしょう。結局1年生の最初に内定の出なかった学生はだらだらと2〜3年の就活を経て、4年生になってまた真剣に就職活動を始める今の日程とほぼ同じようなものになるはずです。

 しかもそれで就職できればかなり幸せで、もう新卒一括採用ではありませんから既卒第二新卒もみな一緒のレースに巻き込まれてしまいます。今よりはずっと不利な戦いが強いられるのです。

 

 もう決まってしまったことですからもう一度新卒一括採用、就活ルールも元に戻せとは言いませんが、何の措置も設けずこのまま無法状態に突入するなら、その利得は大企業に帰し、中小零細企業および普通の学生にとっては地獄のような日々が待っているかもしれないと恐れるのです。

 チャンスの国アメリカは、同時にホームレスになる機会も潤沢に与えています。

 

 そのことをあたかも世界のすう勢だから仕方がないこと、あるいは世界と戦って勝利するための制度改革のように語るの人々に、不審の目を向けなければなりません。