カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「教員採用選考、受験倍率2.0倍の哀れ」~東京都教育委員会の迷走を止めろ!①

 東京都教育員会が、来年の教員採用試験受験予定者の説明会を開いた。
 ずいぶん調子のいい話をしたようだが、参加者もごく少数。
 今さらどうやって教職に学生たちを引き寄せられるというのだ。

という話。

f:id:kite-cafe:20191218071501j:plain(「東京都庁photoACより)

【東京都教委、来年度教員採用試験受験者説明会をする】

 日曜日の夜、テレビを見ていたらNHKで“東京都教育員会が来年度の教員採用試験受験予定者に対する説明会を行った”というニュースをやっていました。

 冒頭、都の担当者が、
「教師は強い使命感によって子どもを育てる素晴らしい仕事です」
とか言っていましたが、「強い使命感」の一言で2割くらいの受験生を失ったなと私は思っていました。

 説明会は年々受験者数の減っている教員採用試験に危機感をもった都が、教職のすばらしさを伝えるために独自に開いたものだと紹介されていましたが、会場の壁に沿って机を並べ、担当者と一対一でおこなう個人懇談は学生よりも担当者の方が多く、続くパネルディスカッションでは100個ほど並んだ座席の8割方が空席という寂しさ。こんな場面を見たら学生は次の説明会に行くのに腰が引けてしまいそうです。
 まだ3年生なのに都教委職員と顔見知りになって、ガンガン迫られても困ります。

 

皮算用で若者を騙す】

 ディスカッションでは都の職員が、
「東京都では教員の多忙解消策として、部活指導や事務仕事に多くの外部人材を充てることにしています」
とも言っていましたが、例えば世田谷区にある二十数校の中学校の、たぶんすべてにあるだろう吹奏楽部に外部人材を全部張り付けることができるのか――その人は吹奏楽の指導ができた上に月曜日から金曜日の夕方2時間、および土日のいずれかで3時間の指導を行える人です。できれば数年は続けて――そんな都合の良い人材が区内に二十数人もいるのか――。それに部活動は吹奏楽だけではないのです。

 いくら人口の多い東京都とはいえ、部活動のすべてに人を当てることなんてできるはずはないと思うのですが、そんなことは一言も言わない。
「制度は作りました、予算も確保しています。あとは赴任先の校長の腕次第かなぁ? 頑張って探してもらいましょ」
といったあたりが実際のところでしょう。

 調べてみると東京都の文書(部活動の教育的意義と適切な運営の在り方)では、
 平成30年度は、部活動指導員を都立学校127校376名配置、平成31年度は、158校548名*に拡充した。公立中学校においては、平成30年度16地区163名配置、平成31年度は32地区384名*に拡充した。(*…令和元年6月現在)
ということですから、今年度の中学校は1地区(23区とか市町村のことかな?)平均で12人。先ほどの世田谷区に当てはめると2校につき一人の計算です。これでは「焼け石に水滴」でしょ?
 こんなものを学生に語るのはほとんど詐欺です。しかしそんな詐欺まがいのことをしてまで、どうして学生に語り掛けなくてはならないのか。

 

【受験倍率2.0倍の哀れ】

 2020年度(令和2年度)の東京都公立学校教員採用選考の倍率は小学校で2.0倍、中学校で2.5倍だそうです。(教育新聞2020年度《2019年度実施》公立学校教員採用選考 最終選考実施状況
 通常こうした試験は3倍を切ると“質”に問題が発生すると言われていますから東京都はもはや限界と言えます。

 もっとも2020年度の採用選考で3倍を切っている道府県市区などざらですから、気にしなくてもいいと言えばそれまでです。ただし東京都の予算規模はスウェーデンインドネシア、ベルギー、トルコに匹敵する規模ですし、人口も多く、その分やれることもたくさんあったはずですから、もう少し考えてみましょう。

 ここまでブラックの悪評が広まる前に、あるいは競争倍率が十分にあるうちに、教育予算を大幅に増額して採用数を増やし、個々の教員の負担を減らしておけばよかったのです。
「他の道府県は知りませんが、東京都の教員は少しも大変ではありません。何しろ1・5倍も先生がいるのですから、全くのホワイト。どうぞ過酷な故郷の教職を捨てて、東京都に来てください」
 そんなふうに宣伝すれば現在のような詐欺まがいの勧誘をしなくても人材はいくらでも集まったのです。

 しかし時すでに遅し。今となっては採用を増やせば倍率が下がって“質”の不安がさらに深まるジレンマ。さりとて教員志望者は厄介な人たちで、少しぐらい給与を増やしたって釣られてくるわけではありません。
 だったらどうすればよいのか。

(この稿、続く)