「PISA報道のまやかしと失望」①〜PISA2015結果発表に寄せて

 PISA2015(OECD生徒の学習到達度調査)の結果発表があり、12月6日、マスコミ各社から報道されました。
 量的に一番多かったのはNHKで、他局はサラッと触れる程度。内容としては、
「科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーいずれも上位に位置しているが、2012年調査に比べ読解力の平均得点は低下した」
「読解力に関する日本の平均得点は516点。国際比較では8番目だが、2012年調査と比較すると22点低下している。2015年調査は参加国の一部を除きコンピューター使用型調査へ全面的に移行したが、国立教育政策研究所はこれを点数低下の要因のひとつと分析。生徒がとまどうなど、解答に影響があったとしている」
 の2点が強調されるにとどまっています。

 2006年に順位を大いに下げたときには「学力低下!」「ゆとり教育の弊害!!」と学校はメチャクチャ叩かれたのに、いざ成績を上げても誰も誉めてくれません。
 PISA2009でV字回復したときは「『脱ゆとり教育』の勝利!」とかで文科省は誉められ、その文科省に圧力をかけたマスメディアも自画自賛、しかし現場の教員に目を向ける人はいませんでした。
(ちなみに、悪名高い「ゆとり教育」学習指導要領の施行は2008年、「脱ゆとり教育」学習指導要領の施行は2011年ですから、順位低下も回復も「ゆとり教育」や「脱ゆとり」と何の関係もないことは明らかです――しかしそれもメディアは扱いませんでした)

 今回のPISA2015にしても、目を皿のようにして探しまくって「読解力の順位・点数の低下」を探し出し問題視していますが、果たして世界第8位は、恥ずかしかったり情けながったり、あるいは不安視しなければならない順位なのか――。

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 単純にPISA2015の「読解力」の順位表をつくって(右図)眺めると、70か国・地域中8位、というのはかなり高い位置で、そのレベルで「学力低下」だの「将来が不安」だの言い出したら下位の国・地域にはほんとうに申し訳ない、まるで他国・地域をバカにしているような話です
。  また、そもそもPISA2000から読解力の成績を見てみると、日本の順位は8位→14位→15位→8位→4位→8位。つまり8位前後を行ったり来たりだけで、今回も至極妥当な順位なのです。いまさら読解力が低下というのもおかしな話です。

 もっとも数学的リテラシーが1位→6位→10位→9位→7位→5位、科学的リテラシーが2位→2位→6位→5位→4位→2位となっているの比べると、やはり読解力が一段低いのは気になるかもしれません。
 また、PISA2015全参加国における順位は上記のとおりですが、OECD加盟国(いわゆる金持ちクラブ)に限って順位付けすると、日本は科学1位、数学1位、読解力6位と、読解力の低さが際立ってきます。
 読解力、読解力とうるさく言う人が気にするのはそのためかもしれません。

 ただ、ふと思うのですが、個人の能力として数学の力が弱いとか読解力にかけるとかはあるにしても、国家としてひとつの能力が大きく落ちるとしたら、そこには何らかの制度的あるいは民族的・国語的な制約があるからだと考えるのが普通でしょう。
 日本の子どもたちは国語の時間に何を学んでいるのでしょう?                                 (この稿、続く)