カイト・カフェ

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「拾遺」〜アメリカ大統領選挙の憂鬱6

 いつまでもアメリカ大統領選挙にこだわっていても埒があきませんので、せっかく調べたのに文の中にうまく収まらなかったものを列挙してこの問題から一応撤退したいと思います。もっとも相手がトランプですので何を言い出すかわからず、せっかく心落ち着けた私ですがまた頭に血を昇らせるということもあるかもしれません。そうなったらまた激情に任せて書くだけです。

【日本は日米安保にただ乗りしているのか】

 少し古い数字ですが(「共同防衛に関する同盟国の貢献度報告」《2004年》←これが最新版)2004年の時点での各国の米軍駐留経費の負担率は以下の通りです。
  日  本=74.5%
  スペイン=57%
  イタリア=41%
  韓  国=40%
  ドイツ =32%
 その額は7600億円余り。ドイツの1900億円、韓国の1000億円、イタリアの440億円などと比べてダントツとなっています。
 ただし私は、トランプの言う通り日本が駐留経費の全額を出すというのもアリかと思っています。そのとき米軍は日本の傭兵ですから、一朝緊急事態あらば自衛隊に先んじて戦ってもらわなくてはなりません。
 それだったら悪くない話です。
 

【輸入日本車に38%の関税】

 2013年にトヨタアメリカで販売した自家用車は92026台。そのうち現地生産は57223台、実に62%にあたります。これが日産だと83%、ホンダに至っては9割近くが現地生産車となっています。
 トランプはその輸入分に38%の関税と言っているわけで、アメリカの雇用状況に多大な恩恵を与えている日本企業を敵に回して、わずか7万台の日本車輸入を阻止するつもりのようです。オロカナコトダ。
 

【そんなこと言ってない】

 日本の核武装容認についてツイッターで「そんなこと言っていない」とつぶやいたそうですが、各テレビ局にVTRの残っているような内容についてもこの人はしばしば「言っていない」「ウソだ」と言ったりします。

 駄々っ子と同じですから、そういわれたら私たちは引き下がるしかありません。あるいは駐留費をもっと出させるとか、日本車に重税をかけるといった話も同様に消えていくかもしれません。それで選挙民が黙っているかどうかはべつですが。

「そんなこと、言ってない!」「ウソだ!」――どうか児童生徒たちのあいだではやりませんように・・・。
 

【ヒラリーはなぜ嫌われたか】

 嫌われ者同士の大統領選と言われた今回の選挙ですが、ヒラリー・クリントンがなぜそんなに憎まれたのか、私には納得ができません。
 ネット検索すると意地汚く稼いだきこと、秘密主義、上から目線で高慢な態度等が出て来ますが、意地汚く稼いだといえば過去の大統領経験者一家はみんな退任後あくどい稼ぎ方をしています(ジミー・カーターを除く)。
 対立候補だったドナルド・トランプもきれいな稼ぎ方をしたとだれも思っていませんし税金すら払っていないようです。

 秘密主義には問題がありメール事件は大きな汚点です。しかしいつまでも引きずるようなことでもありません。トランプだって最後まで資産公開はしませんでした。

 上から目線で高慢な点については、私は8年前、ヒラリーがバラク・オバマ民主党の指名争いをしたときのことを思い出します。
 あのときヒラリーは大統領選が本当にタフでしんどいものだと一瞬涙を見せたのです。それで支持率が一気に下がりました。“弱い女”に米国四軍の指揮官が務まるのか、というわけです。
 ですから今回はひたすら強さを前面に押し出して一度も怯むことがなかったのです。それが上から目線で高慢と評されたのです。
 ところで対立候補のトランプは控えめで謙虚な人だったでしょうか?

 ヒラリーもトランプもともにあくどく稼いだ大金持ちで、両者ともに重大な秘密を隠し、ともに尊大で生意気だった。にもかかわらずヒラリーは憎まれトランプは嫌われなかった(彼が嫌われたのは差別的暴言によるものであって金や秘密や態度のせいではない)、それはなぜか――。
 ここまで書くと明らかになることがあります。それはヒラリーがまさに“女のくせに”金持で秘密を隠し尊大だからです。
 彼女はついにガラスの天井を破れなかった――そう考えるのが適切でしょう。

 ところでヒラリーが嫌われているという話が出てきたのは民主党代表選の時ではなく、本選になってからのことです。それまでは“意外な不人気”という話はあっても“嫌われ者”というイメージはありませんでした。
 そう考えると、結局トランプの選挙戦術に国民を挙げて巻き込まれてしまったというのが事実のように思います。

 以上、アメリカ大統領選挙についてはしばらく黙ります。