メリー・クリスマス

 さて今夜、子どもたちのところにほんとうにサンタは来てくれるでしょうか?

 サンタクロースはクリスマスイブの午後9時から12時の間にプレゼントを配布しているというのが定説です。したがって世界中で最も早く12月24日の午後9時を迎えるニュージーランドを皮切りに、オーストラリア、日本、東アジア・東南アジアの諸国、インドという順に回っています。午後9時から12時という時間帯は地球上を東から西へ移動する帯として表現できます。サンタさんはその帯の中を移動しながらプレゼントを配っているわけで、もし宇宙から眺めるとすると、ひたすら狭い範囲を北極から南極、南極から北極へと移動している様子が見えるのかもしれません。

 サンタさんはおおよそ24時間以内(24日午後9時スタート、12時着なので、正確には27時間以内)に世界中の子どもにプレゼントを配らなければならないので、単純に計算すれば子どもひとりにつき1万分の2秒乃至は3秒しか使えません。しかし実際には子どものいない場所を飛行している時間も長く、訪問時に子どもが起きていると別の家に行ってから再配達ということになるので飛行距離はさらに延び、一人ひとりにかける時間はものすごく短くなってしまいます。

 そこから「サンタさんは実は何人もいて手分けをして配っている」という説が出てきますが、それは間違いです。サンタさんは一人しかいませんし、赤鼻のルドルフを先頭とする9頭のトナカイに引かれたソリは一台だけです(注:公式にはトナカイは8頭で、新参者のルドルフは正式メンバーではないという話も聞いたことがあります)。

 たった一人のサンタさんが、たった24時間で世界中の子どもにプレゼントを渡すという偉業は、実は「サンタ時間」とも言うべき特別な時間操作によって行われています。簡単に言うとサンタさんの24時間は私たちの24時間よりはるかに長いということです。

 これをクロック・アップと言い、仮面ライダーやセーラー・ムーンが変身にどれだけ時間をかけても敵に襲われないのはそのためです。また有名な東大寺の「お水取り」でも、「天の一昼夜は人間界の400年に匹敵する」というクロック・アップを克服するため、二月堂内を修行僧が全力疾走をしていたりします。(通常、私たちから見ると“加速”したかのように見えますのでクロック・アップと言いますが、サンタや仮面ライダーからみると私たちのクロック・ダウンです。それはまったく同じことです)

 もうひとつの大きな謎は、サンタさんがどのように部屋の中に入り込むかというものですが、これはまだ解き明かされていない、歴史上最大の謎のひとつです。特に煙突のない家の子どもたちは毎年非常に不安に思っていますが、今日まで煙突がないためにプレゼントをもらえなかった例は一件も報告されていませんので問題はないでしょう。

 ドイツの古い伝承ではサンタは双子で、一人は紅白の衣装を着て良い子にプレゼントを配り、もう一人 は黒と茶色の衣装を着て悪い子にお仕置きをして歩くといいます。あるいはサンタさんは「クランプス」と呼ばれる二人の怪人を連れて街を歩き、良い子にはプレゼントをくれるが悪い子にはクランプスに命じてお仕置きをさせるとも言います。

 経済や文化のグローバル化によって黒茶のサンタやクランプスが世界中を跋扈する時代も近いのかもしれません。いまから子どもに注意しておくことも必要なのかもしれません。