レアアース

 尖閣列島沖での中国漁船衝突事件以来「レアアース」という言葉が飛び交いましたが、レアメタル(チタン・ゲルマニウム・コバルトなど)と違ってなんとなくイメージが湧かず、湧かないまま今日まで来てしまったので改めて調べてみることにしました。

 それによるとレアアースというのはレアメタルの一部で、原子番号21番のスカンジウム、39番のイットリウム、57〜71番のランタン、ルテジウムなどの合計17元素をまとめていう総称なのだそうです。これらの元素は化学的性質が非常に似通ってるので、レアメタルの中でも一まとめにセットにして扱われます。これらは混ざり合って産出され、また放射性物質がからんで分離・精製が困難なため、日本語では「希土類(希な土)」と呼ばれたりします。

 用途としては例えば、赤や青・緑色に光る性質のあるイットリウムテルビウムユウロピウムなどはカラーテレビや照明・光ファイバーなどに利用され、超強力な磁力を加えることのできるネオジムサマリウム、ジスプロシウムなどはハードディスクドライブやモーター、バイブレーター、スピーカーに使われています。

 そのためハイブリッドカーや電気自動車、携帯電話、パソコン、MRIなどの医療機器、さらにはエアコンや冷蔵庫などのデジタル家電に欠かせない材料となっています。またセリウムは液晶ガラス基板の研磨に使われ、そのほかカメラレンズの屈折率を変えたり石油重合触媒や自動車の排ガス浄化装置に用いられたりと、その用途は広がるばかり。

 そのため世界に冠たる技術立国の日本が使用量も世界一となっています。

 ニュースで盛んに言われるように、現在、中国が世界のレアアースの産出量の97%占めています。確かに埋蔵量も世界の三分の一と巨大なのですが、それを97%支配にまで高めたことには秘密があります。それは価格です。

 中国産のレアアースは飛び抜けて安価で輸出されたため、アメリカをはじめとする他鉱山は太刀打ちできず、ほとんどが閉じられてしまったのです。

 これについて一般には「中国の安い人件費」「レアアースが地表に露出しているため、採掘しやすい」といった点で説明されますが、そればかりではありません。今月号の「文芸春秋」では、レアアース専門輸入商社の社長が次のように書いています。

「私の経験をお話ししょう。まず79年、上海にあった中国最大のレアアース工場を日本人として初めて訪問した時のことである。15キログラムもある鉛のコートをまとって入ると、現場作業員の手が放射能被曝のために、白子(自皮症)の症状を呈していたのを目撃した。また、他の国では採掘した鉱石を工場に持っていってから精製作業をするが、中国では鉱山そのものに大量の硫酸を直接かけることも多い。江西省の現場を見たことがあるが、鉱石中にレアアースはわずか0・2パーセントしか含まれていないため、100トンの鉱石のうち、99・8トンもの残土が硫酸に汚染され未処理の状態で放置されていた。

 さらには、内モンゴル自治区にある世界最大の白雲鉱山では数年前に、大雨で放射性物質がー斉に黄河に流れ出したこともある。他にも80年に訪れた広東省の鉱山では放射性のトリウムが大量に発生したにもかかわらず、ほとんど野積みになっていた。こういったことを枚挙に暇がないほど見聞きしてきた」

 9月のレアアース輸出制限の際、中国は「環境問題を解決するために産出量を減らす」と言っていましたが、内実はともかく表向きとしては正しい説明ということになります。ただしもちろん今後中国が経済発展を制限してもでも本気で環境問題に取り組む可能性はほとんどありません。

 中国の安いレアアースを買わず、インドやベトナムに技術支援をしながらレアアースの輸入先を変えていくということは、安全保障の問題であるとともに地球規模での環境保全と中国国民の保護という意味合いも含んでくるのかもしれません。