懲りない性格

 昔ご一緒させていただいた校長先生のひとりに、初孫をもって嬉しくてしょうがなく、しょっちゅう孫の話をしているような人がいました。

 その人の話の中で、階段を登るようになったのはいいが降りてこられないので必ず2階で泣く、大泣きするので行って降ろしてやると、いつの間にかまた登って泣いている、というのがありました。

「まあ、よく懲りないことで・・・」と言いかけて、校長先生は思い直したように「もっとも、懲りられても困るのだが・・・」とおっしゃいます。

 考えてみればと赤ん坊はしょっちゅうそんな調子で、生まれて初めて寝返りを打ったはいいが、うつ伏せ寝なんて慣れていないので苦しくて大泣きする、戻してやると喜んでキャッキャとやっているのだがすぐにまた寝返りを打っては大泣きする、そんなことの繰り返しです。

 伝い歩きの初期はこれも何度も尻から落ちて嫌な思いをするのですが、絶対にやめない。

 ようやく手放しで歩けるようになった時期はヨタヨタと半分走るような歩き方で、思ったのとは違う方向へ行ってしまうのにそれでも止めない。速度も安定性もハイハイの方が圧勝なのに、一度歩くことを覚えた赤ん坊は二度とハイハイに戻ろうとはしません。

 もしかしたら人間は、最初からこの「懲りない性格」とともに進歩して来たのかもしれません。一度できるようになったことは絶対に手放さないという強い性格があってこそ、進歩は着実なものになって行く、そんなふうに思うのです。

 何度言っても同じことを繰り返して叱られるおバカ息子、それも「懲りない性格」が悪しき表れをしているだけなのかもしれないのです。