カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「23年の夢」~離任式の子ども姿が先生たちへのご褒美だ

 23年前の4月の、最初の週日の夜に深い思い出があります。
 その夜のことは生涯忘れまいとその時決心し、少なくとも23年後の今は鮮明に覚えています。それは私が教員になって学校に勤務した最初の夜のことです。

 新任職員歓迎会のあと先輩に引き連れられて2次会、3次会、4次会と、朝の2時過ぎまで店を移りながら飲み続けたのですが・・・、教員というものは本当に真面目で誠実なもので、どこへ行っても、何時間でも子どもと教育の話ばかりしているのです。

 世間が狭いと言えばそれまでですが、学校以外のどこの世界に、これほど真剣に、これほど熱心に、個々の子どもたちのことを考え、議論してくれる人がいるのでしょうか?

 私はそれまで民間の企業で、それこそ詐欺すれすれの仕事をして人を騙してばかりいましたから、そうした誠実で真面目な人たちと同じ世界にいることがうれしくてしかたがなかったのです。
 生涯この人たちと一緒にいよう、そしていつかこの人たちを助け、支える人になろう、その晩決心したのはそういうことです。

 それから23年経ち、若い先生方を助け、支えるにふさわしい年齢になりました。
 残念なことに、十分それを行うだけの実力をつけて来ませんでしたから、心残りも山ほどあります。しかし、心だけは常にそういう気持ちでやってきました。

 さて、一昨日、卒業式のあとの離任式。そのステージに立ち、高いところから見下ろしていると生徒や先生たちの様々な表情が見て取れます。

「私は声が大きいからマイクは使いません」と言いながら、途中からマイクを使っても聞き取れないような声になってしまった脇坂先生・・・。
 その脇坂先生に「がんばれ! がんばれ!」と小さく応援しようと思って横を向いたら、手前にいる永井先生の目から大粒の涙がボタリ(そんな大きな音がしたように思ったのです)と直接床に落ちて、それで私も動揺しました。

 下ではヘラヘラするしか反応の仕方が分からなくなってしまったSさんが次第に冷静さを取り戻して、冷静になったから泣きじゃくるようになった姿を私は見ていました。

 北村先生のクラスの子が赤ん坊みたいにビービー泣くのも、引き込まれないように気を引き締めながら見ていました。そして何よりも、卒業生があちこちで目頭を押さえているのには驚きました。(オ前ラダッテ 出テ行ク 人間ダロ?)

 あれが誠実で、真面目で、子どものためにいくらでも時間やエネルギーを投入して惜しむことのない、ひたむきな人々へのご褒美です。私たちと児童との間には、こんなにも濃い人間関係が厳としてあるのです。