「中国は今ふたたび危うい国になった」~子どもたちに中国を教える日が来る ②

中国はまたもや独裁者を戴く国になった。
しかしちょうどその今、内政は危機に向かおうとしている。
新型コロナはこれからもこの国で、侮れない内憂であり続ける。
自由と資本の甘い味に慣れた人々も、間もなく我慢できなくなるだろう。
という話。(写真:フォトAC)

【李鋭は予言した】

 先日、ロシアについて、
「なぜロシアはこんな為政者しか生み出せないのか」
と書きましたが、実はこの言い方には元ネタがあって、次のようなものです。
 中国数千年の歴史で培われてきた封建制度や農民意識からは、秦の始皇帝毛沢東や鄧小平のような人物しか出てこない

 語ったのは李鋭という毛沢東の元秘書で、大躍進運動を批判して地位を追われ、文化大革命でも投獄され、その後改革派の論客として長く活躍した人です。数年前まで習近平指導部の政治も強く批判していましたが2019年に101歳で亡くなりました。彼が書き続けた日記は中国共産党を知る上で一級の資料と言われています。

 引用した文には鄧小平の名前もありますが、中国共産党の集団指導体制を指示し、改革開放を果たして今日の経済発展の礎を築いた鄧の名前が出て来るのは、ひとえに天安門事件で軍を動かした責任者だからです。
 二度と毛沢東のような人物を生み出さない、そのための政策を次々に打った鄧小平でしたが、目的のためには国民を犠牲にしてはばからない点で毛沢東と変わりありません。天安門事件の犠牲者は1万人を越えると言われています。
 李鋭の嘆きはしばらく前のものです。しかしいま語らせれば当然ここにもう一人加えられるでしょう。習近平、その人です。

【近くて遠い弱小国のできごとではなくなった】

 もっとも日本にとっては長征も大躍進も文化大革命も、そして天安門事件さえも直接的には影響のなかった事件です。いずれも近くて遠い弱小国のできごとでした。しかし今、同じ規模の大事件が勃発すれば、日本も無傷ではいられないでしょう。日本に限らず世界は中国に深入りしすぎていますし、中国も世界に深く入り込んでいます。

「黒い猫でも白い猫でも鼠を捕るのが良い猫だ」(黒猫白猫論)と言い、「先に豊かになれる者たちを富ませ、落伍した者たちを助ける」(先富論)と煽った鄧小平の改革開放政策は見事に実を結び、いまや中国は世界第二位の経済大国です。中国の有名企業、バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ、レノボ、ハイアール、美団、シャオミなどは、もはや知らない人の方が少ないくらいでしょう。
 しかし習近平政権になって、特にここ数年はだいぶその躍進もだいぶ様変わりしてきました。

 かつての経済成長には陰りが見え、GDPの伸び率が8%切ったら潰れる6%を下回ったら潰れると言われながら、いまや2%台です。看板のゼロコロナ政策は一時期国民の絶大な支持を集めましたが今や重い足かせとなっています。しかし習近平政権は簡単にやめることができない。周国家主席は漫然無欠、無謬でなくてはなりませんから。

【しかしコロナは甘くない】

 韓国や日本の様子を見ても、コロナ禍はある程度の拡散を受け入れなければ落ち着かないようです。
 かつてのコロナ防疫優等生の韓国・台湾・シンガポール・オーストラリア・ニュージーランドも、いまや感染率で世界のトプレベルです。韓国では国民の49%が一度は感染し、イタリアやフランスを大きく越えてしまいました。ニュージーランドで37%、オーストラリア41%、シンガポールで35%、台湾ですら29%もあります(ただし死亡率は欧米に比べて極端に少ない)。
 
 日本は6月の末で7・3%。まさにトップ・オブ・トップでしたが、巨大な第7波であっという間に17・4%にまで増えてしまいました。しかしそれでもまだ不十分、万能ワクチンでも出て来ない限り、第8波は7波を越える感染拡大になっても不思議ではありません。
 ところが中国は現在のところ感染率わずか0・07%。ほとんど無垢みたいなものです。中国製ワクチンの効力を信じる人はほとんどいませんから、ゼロコロナ政策を続ける限り、これかも果てしなくロックダウンを繰り返さざるを得ません。国民の気持ちがもつかどうか。
 
 おそらくそろそろ限界で、今回の党大会の最中にも北京の歩道橋に政府批判の垂れ幕が張られ、映画館のトイレにもスローガンが落書きされた上、ビラもまかれたといいます。昨日は小規模なデモの様子がSNSに挙げられました。
 政府当局は検索を不能にすることで対応し、「垂れ幕」や「スローガン」はもちろん、「勇気」や「反対」、ついには「北京」でさえ検索できなくなったと言いますが、この先ずっと「北京」も検索できないようでは商売にも差し支えるでしょう。いつまでも続けられるものではありません。

【中国のグローバル企業が鳥籠に押し込まれる】

 私がさらに注目するのはバイドゥ、アリババ、テンセントといったGAFAを凌ぐ世界企業です。
 米中対立で煽りを食ったこれらの企業は、世界進出の鼻先を抑えられていますし、国内的には不当に利益を吸い上げられています。ファーウェイの副社長は2年9カ月に渡ってカナダに軟禁状態にされ、アリババの創業者のジャック・マーも三カ月間も行方不明だったかと思ったら巨額の財産を没収されています。行方不明と言えば女優のファン・ビンビンも長期間いなくなったと思ったら脱税で訴えられ、100億円を越える追徴課税や罰金を払う羽目になりました。
 「黒い猫でも白い猫でも鼠を捕るのが良い猫だ」と言われて鼠を捕りまくっていた人たちが、上前をはねられるようになったのです。しかもさらに儲けようと思っても世界への出口が抑えられつつあります。
 資本主義の甘い蜜をたっぷり味わってきたこの人たちが、いつまでこの状況に耐えられるでしょう。だいぶ気になるところです。
 (この稿、続く)