カイト・カフェ

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「新型コロナ以前に、なぜ各国はオンライン学習を始められたのか」~日本でオンライン学習が進まない理由①

 世の中にはわからないことが多すぎる。
 しかも説明できる人が説明せず、調べるべき人が調べもしない。
 中国や韓国、アメリカではオンライン学習が進んでいるといいながら、
 どう進んでいるのかはだれも知らない。
 いや、知っていても語らない。不思議に思っても調べない。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200603070627j:plain(「オンライン学習するきょうだい」フォトACより)

【大切なことを説明しない、調べない、追求しない国】

 この国の政府はここまで説明の労を厭い話をしない政府だったのか、この国のメディアはここまで取材を面倒くさがり真実を追求しない存在だったのかと、最近ホトホト呆れています。

 ついこの間も書きましたが、一方でかなりの人たちが相変わらず「もっとPCR検査を!」と叫んでいるのに、なぜ検査数が増やせないのか、政府は説明もしなければマスメディアも追求しない。ただ「増やせ!」「増やします!」を繰り返しているだけです。でも思ったほど増えない。

 9月入学についても「非常に複雑で影響の大きい制度変更なので、この新型コロナ感染の混乱の時期に決めるべきではない」という、それ自体は至極まっとうな理由で取り下げになりましたが、私に言わせれば、
「もう日本の学校は部活動をしません。児童生徒会も学校行事も総合的な学習の時間も、道徳の授業さえも大幅に縮小してグローバル・スタンダードに合わせ、教科学習を中心にやっていきます」
 そう宣言して通すくらいの覚悟がないと絶対にできないことなので、可能性はゼロだと思っているのです。なのにその影響の大きさに関する政府の発言、メディアの報道はあまりにも少ない。

 ニュースでも「来年度9月入学の場合、教員が2万8千人不足することになります」などと呑気に言っていますが、2万8千人はとんでもない数字で、2020年度の教員採用試験の合格者が3万7千人弱、つまり9月入学にした場合、来年度教員採用試験はこれに加える2万8千人で計6万5千人。本年度の1.8倍もの合格者を出さなくてはならないのです。全国の平均倍率は本年度の半分近い2倍少々、地方公共団体によっては定員割れになるところも出てきます。

 教師の質の低下などとふざけたことを言っている最中に、さらにたくさんの質の低い教員を抱えることになるかもしれない、そう考えただけでも「来年度9月入学」なんてできっこない。だからこの際9月入学は丁寧に、完全に葬り去っておいた方がいいと思うのですが、誰も本当のことを言わず、中途半端なまま終わってしまいました。
 いつかまた同じことが繰り返される日が来るに違いありません。そしてまた最初からやり直しです。

 そして今、私が一番カリカリしているのは、これに加えてオンライン学習の問題です。

 

 【ほんとうに日本のオンライン教育は遅れているのか】

 この件について日本が遅れているかどうかを考える前に、主として中国・韓国・アメリカ(特にニューヨーク)のオンライン学習が、どう進んでいるかについて考えたいと思います。というのはこれらの国あるいは都市で、オンライン学習を進める理由がまったく理解できないからです。

 中国も辺境部、アメリカも中央平原、あるいは名前は上がっていませんがオーストラリアやカナダ、ロシア、モンゴル、西アジアなどの大平原・砂漠地帯でオンライン学習が進んでいるというのなら分かります。
 隣の家まで数十kmといった地域では学校になんか通えませんし、遊牧民の子ども移動教室というわけにもいきません。だからネットを使って自宅で(パオで)学習をする、そのための技術も能力もすでに整っているというなら分かるのです。

 しかし華のニューヨーク、北京や上海、ソウルで、新型コロナ以前のいずれかのとき、子どもたちは何が悲しくて一斉に学校に行くのをやめ、家にこもってオンライン学習をしていたのでしょう。まさか同時多発不登校、あるいは新型コロナ感染を予想しての全国一斉オンライン学習訓練ということでもないでしょう(そんなことがあればいくら何でも私たちの耳に届きます)。

 目の前に学校があるのに行くことをやめ、わざわざオンラインで学習する理由はまったくありません。ましてや校内で先生が別室からオンライン授業を行うということも考えられません。(あ、ひとつだけ例外がありました。イスラム教の国で女子大の講義を男性教師が行う場合、この時だけは校内オンライン授業です。しかし中・韓・米、どこをとってもイスラムの影響の強い国ではありません)

 そこから導き出される答えはひとつです。
 私たちが思い描いているような“教師がネットを通じて、家庭にいる子どもたちと双方向の学習を進めるオンライン学習”を公立学校で行ってきた国や地域、そんなものはどこにもない、いま始めているところも試行錯誤でエッチラ、オッチラやっているに過ぎないということです。

 しかしそんなことを言うときっと、
「いやいや一昨日の新聞にも『高校生のオンライン学習、日本は経験率が最低…米中韓と比較』(2020.06.01 ReseMom.Biz)という記事があった。それによると、
 日本の高校生は、オンライン学習をしたことが「ある」と回答した割合が48.8%と、韓国72.4%、米国70.8%、中国58.3%に比べて4か国中もっとも低いことが、国立青少年教育振興機構が2020年5月に発表した意識調査報告書より明らかになった。
ということだが・・・」
と言い出す人もいるかもしれません。

 しかし考えてもみてください。
 日本の高校生の半数近くが、在宅でテレワークならぬオンライン学習をしたことがあるなんて、ありえますか?

 そこでこの記事を丁寧に読んでみると気づくのです。
 もしかしてここでいうオンライン学習って、インターネットで調べ学習をしたり、Eテレの学習講座を見るようなことじゃないのか?

 オンライン学習をしたことが「ない」と回答した者に対し、オンライン学習をしない理由を複数回答でたずねたところ、日本の高校生は「どんなサービスがあるかわからない」が35.7%ともっとも高く、ついで「インターネットで学習する必要性を感じない」35.0%。
 どんなサービスがあるのかわからないのは私も同じです。学校で勉強して山ほどの宿題を持ち帰り、さらに学習塾や予備校に行ってなおかつ「インターネットで学習する必要を感じない」のも当たり前でしょう。

 よくわかりませんがいずれにしろ、現在通っている高校の授業をオンラインでやるというような話ではないことは確かなようです。

(この稿、続く)